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海の中のベッドルーム〜ペンバ島(タンザニア)〜《世界のワクワク住宅》

〈Vol.006〉

1870年にフランスのジュール・ヴェルヌが発表した冒険小説『海底二万里』は今なお世界中の子どもや大人に読み継がれている一冊で、日本でも多数の翻訳が出ている。この小説の根強い人気は、潜水艦そのものというより、海の中での生活が多くの人をワクワクさせるからではないか。残念ながら、海中住宅はまだ実現していないようだが、海の中で一夜をすごすことは可能だ。そこで今回は、海の中で眠れる部屋、アンダーシー・ベッドルームのあるホテル、マンタ・リゾートをご紹介することにした。

場所はアフリカ東海岸、タンザニア沖のザンジバル諸島で二番目に大きな島、ペンバ島。この諸島一帯はタンザニア連合共和国に属するが、ザンジバル革命政府の自治領である。

さて、海中の寝室はどういう仕掛けかというと…何のことはない、3層構造の建造物が海上に浮かんでいるだけだ。このスウェーデン製の浮島は岸から約250m離れたところに錨を下ろして停泊している。最上部のデッキでは日中は日光浴、夜になれば天の川をはじめ、満天の星を楽しめる。

海面レベルの中間層はラウンジスペースで、食事をとったりカウチでくつろいだり、気が向けば、カヤックを漕いだり、海に飛び込んでシュノーケリングもできる。そのほか、簡易シャワーと船舶用マリントイレ完備の浴室もある。ちなみに、備え付けの洗剤や石鹸はすべて生分解性の環境にやさしいものが使われているそうだ。

ラウンジから階段を降りると、そこは360度海が見渡せる寝室だ。ガラス張りであることで、自分が魚たちと一緒に海の中にいる感覚を味わえるのだろう。これこそマンタ・リゾートのアンダシー・ベッドルームが潜水艦よりも魅力的なところだ。

ペンバ島は面積が東京都の半分弱で、その大半を森と沼地が占める。風は香辛料の香りがするという。それもそのはず、島にはクローヴの木が300万本以上あるのだ。人口40万のこの島に舗装道路は1本だけ。ザンジバル諸島最大のウングジャ島にはホテルが150余あるのに対して、ペンバ島にはわずか数軒! 島での移動は悪路が多く、容易ではないが、秘密の入り江や知られざるビーチを発見する楽しさもある。豊かな自然が客人を迎えるこの島全体が都会生活から完全に切り離された隠れ家のようだ。

この島は海が美しく、ダイビングスポットとしても有名だ。シュノーケルや潜水を楽しんだ後、夜もベッドに寝転んで魚たちを観察できる。というのも、海中の外壁に照明が設置されているので、魚たち–––昼間は見えないイカやタコや珍しいウミウシなども–––が寝室の窓近くまで寄ってくるからだ。ガラス越しに浮かぶ魚の姿を見ながら眠りにつく…マンタリゾートには五つ星ホテルのサービスはないが、こんな贅沢ができるホテルである。

マンタ・リゾートを運営するのはスウェーデンのリゾート開発企業クヮニーニ。2007年自国製の浮島を利用したホテル建設のため、インド洋に浮かぶペンバ島を選ぶ。当初から島民とともに計画を進め、ザンジバル革命政府とも協力しつつ、リゾート前の約1kmにわたる沿岸を保護地区として環境保全にも努めている。これまでのところ、同社の積極的に環境を守る観光開発は成功しているようだ。なお、マンタ・リゾートには陸上のコテージも15棟ある。

ところで、2007〜08年頃、本格的なアンダーシー・ホテルオープンの計画が相次いで発表され–––フィジー、ドバイ、上海など–––メディアでさかんに話題になったが(『ニューヨーク・タイムズ』2007年3月18日)、どれもオープンしていない。各ホテルの開業延期・中止の具体的な理由は不明だが、環境問題、施設の建設・維持費、人体への影響等々、陸上のホテル経営にくらべて難題が多く、解決しきれないことが一因だったと聞く。開業できていないホテルはすべて大規模かつ超豪華仕様で、さまざまな状況に柔軟な対応ができないという事情もあったのではないか。

その点、マンタ・リゾートは二人用のアンダーシー・ベッドルームの浮島が一つあるだけ、と単純明快だ。だが、このささやかな浮島が海の中で眠るという人々の長年の夢を実現させたのである。偉業と言ってもよいくらいだ! 日本からは長旅になるが、魚と一緒に眠る体験のため、出かけてみてはいかがだろうか?

*アンダーシー・ベッドルームは二人で1泊1500〜1700ドル(2018年2月現在)。料金には、一日三度の食事(毎回ボートで浮島に届けられる)、フリードリンク、スパ・トリートメントが含まれる。カヤック、シュノーケル、フィンなども自由に使える。ダイビングだけは予約が必要で、別途料金がかかる。

*アクセス ペンバ島にはザンジバルまたはダルエスサラームから定期便が飛んでいる。そのほか、各地からのチャーター便も多い。

写真・出典 Information and Images: Kwanini/ The Manta Resort

文責:林 はる芽