《 菓子工房賃貸推進プロジェクト 》Vol.009

菓子工房付き住居新築プロジェクトに関するオンライン公聴会&メールアンケートを実施

投稿日:2023年3月16日 更新日:

著名な建築設計事務所からの相談

「菓子工房賃貸推進プロジェクト」Vol.006の記事で新築マンションの1室を菓子工房付き住居にしたことをご報告しました。
この物件については、菓子工房を持ちたいという方々からの反響も大きかったのですが、不動産オーナーさんからの問合せやメディアからの取材依頼も多数頂戴しました。

そんななか、ある著名な建築設計事務所さんから「東京メトロ東西線『西葛西』駅で進めている新築企画があるのですが、その1階を菓子工房付き住居にしてはどうかとオーナーさんに提案しています。久保田さんに協力していただきたいのですが、いかがでしょうか?」という相談をいただきました。
ワクワク賃貸で菓子工房の空き待ち登録をしてくださった方は早くも80名近くとなり、菓子工房を増やすことにつながるお話は大歓迎。私自身も建築家の方に教えてほしいことがたくさんあったので、喜んで協力させていただくことにしました。

それから2ヵ月近くにわたり、建築設計事務所さんがつくられたプランについて私見を述べさせてもらったり、疑問に思ったことを素直にぶつけたりということを繰り返し、その結果、大変魅力的なプランができあがりました。
それをオーナーさんにご提示いただく前に、実際に菓子工房を使われる方たちの声も拝聴したらどうだろうか?と思い立ち、空き待ち登録をしてくださっている方々にオンライン公聴会への参加を呼びかけてみました。
同時に、開催日時で都合がつかない方にはアンケートにご回答いただけないかと依頼したところ、ありがたいことにオンライン公聴会には3名、アンケートには7名の方が協力を申し出てくださいました。

今回はこの新築計画をご紹介するとともに、オンライン公聴会やアンケートにご協力くださった方々のご意見を皆様にお伝えしたいと思います。

西葛西新築プロジェクトの間取りプラン

はじめに新築計画の概要からお伝えします(※上の平面図はクリックすると拡大されます)。

立地
  • 東京メトロ東西線「西葛西」駅から徒歩12~13分。
  • 周辺はマンションが建ち並び、中川(荒川の支流)が近くを流れる。
  • 公園が多く、自然環境が豊か。
新築予定の物件
  • 鉄筋コンクリート造4階建て。
  • 2階と3階の半分をオーナーが自己使用する(住居利用)。
  • 1階に菓子工房付き住居を2部屋設ける。
  • 3階の半分と4階も小商いしながら暮らせる住居にする。
  • 1階にウッドデッキを敷いた広めのテラスを設け、そこでマルシェを開催したい。
1階菓子工房付き住居
  • 101号室は31.32㎡、102号室は30.16㎡。
  • 部屋の半分を菓子工房とし、残り半分を住居とする。
  • 菓子工房は壁で仕切り、廊下を設ける。これにより、トイレは1つでよくなり、前室も設けなくてよくなる(※この件については別の記事で詳しくご紹介します)。
  • お菓子を対面販売もできるようにするため、101号室はミニ店舗スペースを設け、102号室はテラス面に小窓を設ける。
  • 家賃は2室とも12万円程度としたい意向。

ポイントを列記すると以上のような計画です。
実際に新築の話が進むかどうか、本記事を配信した段階では未定ですが、是非とも実現してほしいプランです。

オンライン公聴会の実施

このプランについて、空き待ち登録くださった方たちのご意見を伺いたく、まず2023年2月5日(日)午前11時からZoomを使ってオンライン公聴会を開催しました。
参加くださったのは、

世田谷区周辺で菓子工房を持ちたい女性

菓子工房付き住居を探している神戸にお住まいの女性

ウィスキーの試飲セットをつくりネット販売をしている神奈川県在住の男性

の3名です。
はじめにこの新築計画について詳しく説明したあと、間取り・設備についてご意見をいただくところからスタートしました。
以下、主な意見を列記いたします。
皆様も間取りプランを先にご覧いただき、自分ならどうしたいか考えてから読んでいただくと、いっそう面白いかもしれません。


間取り・設備についてのご意見

菓子工房を仕切る壁は、腰から上がガラスだとありがたい。普通の壁だと圧迫感がありそう。

200Vの動力があると嬉しい。

靴をどこで脱ぐのか、ちょっと悩んでしまう。

101も102と同様に外と窓ひとつで接するのでいいかもしれない。カウンターと店先は要らない気がする。駅徒歩12~13分ということもあり、対面販売するのはあまり向いていない気がするので、そうであれば、菓子を製造するスペースは少しでも広いほうがありがたい。

単身者であれば、この広さでお風呂をなくしてシャワースペースだけにするのは合理的(反対に「私は浴槽がどうしても欲しい」という意見もあり)。

菓子工房のキッチンはもっと狭くていいのではないか。プランでは幅1800mm程度のキッチンになっているが、幅1200mmぐらいにして、削減した600mmのスペースは、使う人の必要に応じて作業台や背の高い収納棚を置くなどして、入居者が自由にできるほうがいい。

間取り・設備についてのご意見のなかで、私が特に興味深かったのがキッチンの幅に関するものです。
菓子工房といえども調理をするスペースには違いないから、キッチンは広いほうがいいと考えがちですが、お湯を沸かしたり、洗い物をしたりするぐらいしかキッチンは使わず、菓子づくりは専ら作業台のほうで行う人も多いという話を聞き、なるほどなあと思いました。

続いて伺ったのが、東京メトロ東西線「西葛西」駅から徒歩12~13分という立地についてです。


 立地についてのご意見

ネット販売中心の人なら駅からの距離はあまり気にならないと思う。

対面販売はプラスアルファ程度の立地。対面販売を一生懸命したい人は、そもそもこの立地を選ばない。

立地についてのご意見としては、先の間取り・設備に関する意見のなかにも「対面販売をするにはあまり向かないから工房スペースを広くしたほうがいい」というお話がありました。
確かに常識的に考えれば、絶好の商業立地ではありません。
一方で、このマンション全体が小商いをしたい方のための賃貸住宅となって、そういう趣向の方々が集まってきて、さらにテラスでマルシェなどが定期的に開催されるようになると、案外化けるかもしれない、というのが私の発想のなかにはあります。
ただし、そのためには多くの仕掛けも必要になってくるので、企画運営者の力量によるというところもあります。そのあたりをどう考えるかがポイントかもしれませんね。

もう1点、自前の菓子工房を持ちたい方の中には、ご自身が使わない時間帯や曜日はシェアキッチンとして貸し出したいという方も多くおられます。
今回の立地をシェアキッチンとして考えた場合、どうなのかということをシェアキッチン運営事業者さんに聞いてみたいと思いました。
個人的には厳しいのではないかと思っているのですが、どうでしょうか?

最後に月額12万円程度と考えられている家賃設定について、どう考えるかお聞きしました。


家賃設定について

10万円程度だと嬉しい。ネット販売中心の人は立地をあまり気にしないので安い家賃を求める人が多いと思う。

専有面積30㎡で12万円だと、西葛西までは行かない気がする。

西葛西周辺で菓子工房をやりたい人であれば、12万円は妥当ではないか? 菓子工房にするための初期投資が全く要らないというのが大きい。

菓子工房の空き待ち登録者さんたちは、月額10万円以内で探しているという方が圧倒的多数なので、この点についての反応は予想していた通りでした。
ただ最後のご意見にもあるように、菓子工房をつくるために自分で50万円~100万円程度負担しなければならないケースが多いこと、そもそも菓子工房にリフォームすることが許されず苦労されていることなどを考慮すれば、12万円でも妥当という考える人も出てくるように思います。
皆さんはいかがお考えになりますか?

メールアンケートで頂戴したご意見

オンライン公聴会を実施したあと、アンケートであれば協力できると言ってくださった方たちにメールでアンケートをお送りしました。
質問は大きく分けて次の6つです。

❶ご回答者様自身のことについて。

❷間取り・設備について。

❸東京メトロ東西線「西葛西」駅徒歩12~13分という立地について。

❹菓子工房前に設けるテラススペースについて。

❺家賃設定について。

❻菓子工房付き住居について。

ご協力者にはオンライン公聴会で出た意見・感想等もお伝えし、それも参考にしていただきながら、自由に意見を述べてもらいました。
以下、主なものをご紹介いたします。

❷ 間取り・設備について

カウンターの販売スペースには可能性を感じました。周辺に住宅地があれば、焼きたてのお菓子を時間を決めて販売してもいいかもしれないと思いました。今はテイクアウトの飲み物は販売OKだと思うので、憩いの場になったらいいなと思います。

101については、入口がどうなっているのか気になった。毎日お店を開くわけではないと思うので、両開きのドアでは日常生活の導線上の不便があるように思った。

家族ありなので、今回の間取りは検討外。工房のみ使いたい。どなたかとシェアして使えるのであれば魅力的。

コロナ禍で感じましたが、窓越しに販売できる感じはいいかもしれません。

❸ 東京メトロ東西線「西葛西」駅徒歩12~13分という立地について

実販売に向いているかどうかは、販売する人次第な気がします。SNS等で人気になれば、遠くてもお客様は来てくれると思います。駅近でなくても住宅街なら問題ないかなと思います。

駅からの距離はあるが、周囲に公園が多いとのことなので、公園への行き帰りに立ち寄ってもらえるような立地であれば、対面販売の集客も見込めそうかなと思います。

オンライン販売中心であれば、駅チカでなくても良いです。

駅から徒歩12~13分くらいだと、1人暮らしや若い人というより、比較的ファミリーが住むイメージなのでこのくらいの距離の場合は、住居兼店舗物件は必要なのか?と思います。

既に都内に住んでいる人間であれば、近隣に地縁がないと厳しい。

オンラインですでに見込み顧客がいる場合問題ないが、軌道に乗るまで副業をしているなどの場合は都心へのアクセスが良好な方が良い。

良く知っている所なので駅から遠くても魅力的

ふらっと歩いて立ち寄る感じのお客様は期待できないかもしれませんが、SNS等で集客、予約、支払まで済ませてもらい、受け取りは工房で行えば良いと思います。近隣のお客様なら送料払わずに受け取りたい方もいるのでは? 受注販売ならロスも減らせると考えます。

❹ 1階建物前に設けるテラスについて

テラスはあるといいと思います。Vol.006で紹介された桜上水の物件のお店も何回か行っていますが、テラスがあるために、お客さんが立ち寄りやすいというふうに見受けられました。

テラスでマルシェを開催したり、イベントを入居者さんと開いたりして、地域の人気スポットになりそうな可能性を感じます。

ウッドデッキやグリーンがあってくつろげる場所がほしいです。

開業したお店の雰囲気が良ければ建物としての魅力は増すが、入居者側はセキュリティにやや不安がある。

マルシェ開催、交流できるのは魅力的。常連さんの行きつけの場などになってくれたら◎

❺ 月額12万円程度という家賃設定について

住居と工房を別々に借りることを考えると、住居兼工房で12万程度は高くないと感じます。

西葛西について私はあまり知らない土地なのでわかりませんが、徒歩10分以上、30㎡で12万は高い気がします。しかし、すぐに店舗ができるのと新築なのでこのくらいになるのかな、という感じ。

私はスタートとしては10万円以下だと嬉しいですが、とても素敵な建築物になると思うので、この場所を生かして、ビジネスプランを立てて借りる方が入居してくれるのではと思います。

菓子工房付き物件自体が珍しいので、需要がマッチする単身者を見つけることができれば初期費用を考えると妥当なように思う。一方で単身者でない場合、単純なセカンドハウス利用となるので費用負担が大きい。菓子工房のみスペースで賃料が抑えられるとよい。

10万円以内だと嬉しい。シェアして使うなどできるなら12万でもいいのかも。

できればもう少し低い方がよいのは当たり前ですが、住居と店舗別々だと12万じゃ済まないので、妥当かと思います。

店舗物件を見ていると、安い家賃であってもスケルトンだったりして内装工事にお金が掛かるので、新築でなおかつ住居付き12万は破格だと思います。

❻ 菓子工房付き住居について

菓子工房付き住居に興味、憧れはあるのですが、住居部分を充実させることが難しそうな印象があります。

(キッチンの広さや浴槽無しなど)生活のしやすさがもっと上がるとかなり魅力的ですが、シェアキッチンとしても使いたいことも踏まえると、住居とは別に菓子工房を設けた方が、私の求める使い方に近いかなと感じています。

菓子工房付き住居はとても魅力的ですが、建築する場合やはり1人暮らしというか、20~30代がターゲットになってしまうのでしょうか。私は50代で、転勤もあったので持ち家がありません。夫婦2人暮らしで住める物件ができたらいいなと勝手に思っています。この年齢だとほぼ持ち家があると思われるので無理なのでしょうか。
ただ、これからは人生100歳時代なので、老後夫婦でお店を開きたいというような夢も持てると思うのでそのような物件もあると嬉しいです。

シェアキッチンのようですが、複数の住居と菓子工房というタイプも需要ありなのではと思いました。週末にイベント出店用でお菓子を作り、平日は別の仕事というワークスタイルの場合は、毎日は使いません。シェアキッチンで感じている難点は、材料を運ぶのが大変なのと、時間がきっちり区切られていて細切れの作業ができないこと、できたものを運ぶのに車で行くので、駐車場所を探すことです。同じ建物の中にあれば、忘れ物もすぐに取りに行けてよいなと思います。

ターゲットを住みながらも自宅で開業したい人にするのか、既に家族との住まいがあるものの、プラスワンで拠点が欲しい人なのかで需要が分かれるように思う。私の場合は後者となるため今回の物件は対象外となる。ある程度資金余力のあるファミリーが近隣に見込めるなら、菓子工房のみをセカンドハウス的に借りたい方を取り込める気がします。また、店先で開業したい場合は開業する人自体に入居以前にファンがいない場合、開業後に集客が望めず結果としてずっと店を閉めているという事も考えられると思うので、物件立地がかなり重要になると思いました。

今回の案件はシェアできるならとても魅力的な物件です。空き家がリフォームされた、家族で住める住居付き工房があれば嬉しいです。

朝早くから機械の音でご迷惑にならないか心配なので、なるべく防音材?のような壁だとありがたいですが、そこまで難しいでしょうか。小さめの一戸建てとか、平家とかメゾネットとか、そんな感じもいいかもしれないとも思います。

最近は賃貸マンション等で菓子製造許可を得て活動している方が増えてきたと思います。とはいえ、皆さん不動産屋さんに取り合ってもらえないことに苦労されているようです。久保田さんのこのプロジェクト、もっと広まっていけばいいと思います。

今回の計画に関する私案

オンライン公聴会とメールアンケートの結果については、個人情報を伏せたうえで建築設計事務所さんにご提供しました。
私個人としては、Vol.006でご紹介した京王線「桜上水」駅(※「新宿」駅から5駅)の物件であれば30㎡程度でも人気を集めそうですが、西葛西という立地の場合、単身世帯よりファミリー世帯のほうが向いている気がしてきました。
ただ2つ足して60㎡とした場合、家賃も24万円にしようとすると条件が厳しすぎるので、今回のケースでは15㎡ほどの菓子工房3つと、販売や菓子教室として共同利用できる15㎡ほどのスペースをつくり、家賃を8万円程度とするのがよいのではないか?と考えました(8万円✕3工房で家賃は合計24万円いただけるようになります)。
しかし、その設計プランを考えるのは難しそうですし、共用スペースの運用についてもアイディアが必要なので、あくまで“外野”としての意見・感想にとどまります。
建築設計事務所さんがどのようなプランにまとめられるか、それをオーナーさんが承諾くださるかどうか、注目しています。

今回のオンライン公聴会やメールアンケートを通して、菓子工房をつくりたい方たちの“生の声”を聴けたことは、私にとっても大いにプラスとなりました。
特にオンライン公聴会では「今、東京都目黒区内で新たな菓子工房づくりを考えているのですが、ご関心はありますか?」と企画をぶつけてみたところ、すごく関心を持ってくださった方があり、具体的な話を進めたりもしています(※このことは別の機会に詳しくレポートします)。
ご参加くださった方にとっても、不動産屋や建築家、オーナーさんが何を考えているのかを知ることができる貴重な機会になったかもしれません。
大きな手応えを得られましたので、また同様の機会を設けさせていただきたいと思っています。タイミングが合うようでしたら、是非ご参加ください。

最後に、この場を借りて、ご協力くださった方々に深く御礼申し上げます。
たくさんの知識と、この企画を続けていくエネルギーを与えていただけました。
本当にありがとうございました。

文:久保田大介

  • この記事を書いた人

久保田 大介

『ワクワク賃貸®』編集長。有限会社PM工房社・代表取締役。 個性的なコンセプトを持った賃貸物件の新築やリノベーションのコンサルティングを柱に事業を展開している。 2018年1月より本ウェブマガジンの発行を開始。 夢はオーナーさん、入居者さん、管理会社のスタッフさんたちがしあわせな気持ちで関わっていけるコンセプト賃貸を日本中にたくさん誕生させていくこと。

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