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《 DIY賃貸推進プロジェクト 》Vol.011

賃貸住宅で菓子製造業許可! DIYで住まい+αの夢を実現

投稿日:2020年6月25日 更新日:

居住用の賃貸物件、住まい以外の使い方はできるのか?

皆様こんにちは!DIY賃貸推進プロジェクト、特派員の伊部尚子と申します。
賃貸住宅の管理会社に長年勤務しており、住まい手がDIYできる賃貸住宅を増やす取り組みをしています。
新型コロナウイルスは私たちに新しい生活様式をもたらしましたが、それだけに留まらず、住まいのあり方や、仕事場のあり方も大きく変わってくると思っています。在宅勤務の快適さに目覚め、自宅での仕事が増える方もいるでしょうし、これを機に自宅近くに仕事場を設けたいという人や、本当にやりたい仕事をやるために準備を始める人、小さく起業する人なども出てきそうです。実際に私のまわりにも、そういう方が増えています。
人の暮らしが変化すれば、その場所となる建物の使われ方も変化するでしょう。そして、これを読んでいる方の中には、そういう理想の空間をDIYで作りたい!と考える方もいらっしゃると思います。
しかし、このコラムで今までお話ししてきたように、建物には建築基準法や消防法をはじめ、さまざまな法規が関わっているので、どんな使い方をしてもよいというわけではありません。もし分譲マンションの一室を借りるのであれば、管理規約を守らなければなりませんし、一般的な賃貸住宅でも大家さんや管理会社の意向に背く使い方はできません。
今回は、居住用の賃貸住宅で、居住以外の使い方をしたい場合のことを考えてみましょう。

新型コロナウイルスは、私たちの暮らしに対する考え方にも大きな変化をもたらしました。

賃貸住宅で販売用のお菓子の製造は出来るのか?

住まいで仕事と言っても、仕事の内容によっては法律の規制が関わってきたり、その他の問題をクリアする必要が出てくることがあります。ここでは、「住まいで販売用のお菓子の製造がしたい」という夢を持ったお客様の実例を元に、その夢が実現するまでの道のりを書いていきたいと思います。
私は管理会社に勤務して長いのですが、居住用の物件でこういう要望をいただいたのは初めての経験でした。最初お聞きした時には「そんなことできるの?」と不安になったのを覚えています。 お客様に事情をお聞きしたところ、こんな答えが返ってきました。
「既にお菓子を作る仕事はしており、ほかに場所もあるのですが、それとは別に、お子さんが安心して食べられるお菓子をインターネットで販売したいんです。業務用ではなく家庭用のオーブンを使うので、電気も今のままで大丈夫です。キッチンまわりの使い方も、お料理好きなお宅と変わらないと思います。でも、菓子製造業許可を取得するためには、キッチンとは別にシンクを設けないといけないんです。DIY可能物件ならできるのかもと思って、やっとこの物件を見つけたんです」
お問い合わせいただいた物件は、このコラムではおなじみの練馬区春日町にあるファミリー物件、「ワク賃023」でした。
大家さんに聞いたら、「法律などに違反せず、他の入居者さんに迷惑にならないのであればいいですよ」と言われました。大家さんもOKならば、何とかしてこの願いを叶えて差し上げよう!と思ったのですが、私の知識では物件でお菓子の製造をすることは法的にも設備的にも問題ないのか、どんなことに注意しなければならないのかが全くわかりませんでした。
こうなったら、いつものあの方々にお願いするしかありません! こういう時に頼りになるのは、賃貸物件の壁に穴が開けられるのかを教えてくれたり、DIYに必須の知識である内装制限について教えてくれたりする、優秀な一級建築士の皆さんです。

いつも頼りになる一級建築士さんたち。左から、新堀アトリエ一級建築士事務所の新堀学さん、株式会社建築再構企画の佐久間悠さん、株式会社SPEACの宮部浩幸さん。

「用途地域による建築物の用途制限」とは?

建築士の皆さんからは、まずはその地域に建築できる建物の用途を調べるように言われました。市街地の土地の利用は、住居用、商業用、工業用などに分けて考えられており、都市計画法の第8条で13種類の用地地域が定められています。せっかくなので全部列記してみましょう。第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域です。聞いたことがある人もいらっしゃるかもしれませんね。私たち不動産業者は、宅地建物取引士の試験で勉強する範囲です。
ワク賃023の場所の用途地域を練馬区のホームページで調べてみたところ、第一種低層住居専用地域でした。
用途地域がわかったら、次はここに建築できる建物を調べます。バラバラな用途の建物が乱立して住みやすいまちづくりが阻害されないために、建築基準法の第48条で用地地域ごとに建築できる建物の種類や用途が制限されているのです。
東京都市整備局のホームページで「用途地域による建築物の用途制限の概要」を調べてみると、第一種低層住居専用地域には「兼用住宅で、非住宅部分の床面積が、50㎡以下かつ建築物の延べ面 積の2分の1未満のもの」が建てられるとありました。今回のお客様は主に住まいとして借り、リビングの一角でお菓子の製造もしたいということなので、大丈夫なのでしょうか・・・?
しかし、よく見てみると備考欄に「非住宅部分の用途制限あり」とあります。OKな用途に販売用のお菓子の製造は入っているのか、建築士さんたちにお聞きしてみました。すると、建築基準法施行令第130条の3に、第一種低層住居専用地域内に建築することができる兼用住宅の用途が規定されており、「自家販売のために食品製造業を営むパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋その他これらに類するもの」は大丈夫ですよと教えてもらえました。さすが一級建築士さん! 良かった、販売用のお菓子の製造はOKってことですね!

排気についても気をつけないと、建物中が甘い匂いに包まれますよと言われました。 スイーツ好きにとっては幸せな匂いなんですけどね~

菓子製造業の許可を取るための工事とは

今回お客様が取得しようとしている菓子製造業の許可は、食品衛生法に基づいています。許可を得るためには都道府県知事が定めた基準をクリアする必要があり、保健所がその窓口です。ワク賃023は練馬区にあるので、練馬区の保健所にお客様に直接相談に行っていただきました。いろいろ決まりはあるようですが、今回の間取りや設備から変更する必要があるのは、当初お客様がおっしゃっていたようにシンクの増設のみでした。
ワク賃023はDIY可能で原状回復義務なしが元々のルールですが、さすがにシンクが二つになっては次の入居に差し障りがあるだろうということで、シンクの増設部分だけは原状回復をしていただく契約にすることになりました。また、給排水の工事を素人が行うのは危険なので、お客様が直接プロの方にお願いして下さることになりました。
ほかにも募集中のお部屋はありましたが、使用方法が完全に居住用ではないことや、お菓子を焼く匂いの問題、排水の問題から1階のお部屋にしていただきました。シンクを増設したい場所の床にちょうど床下点検口があったので、都合が良かったのです。

左側にキッチンが設置される予定。右側にシンクを増設します。

床下点検口から給排水管を繋ぐためには、点検口の蓋に穴を開けなければなりませんでした。しかし、シンク設置は原状回復義務ありの契約なので、この点検口の蓋は退去時まで保管しておいて、新たに点検口の蓋をDIYで作ることになりました。

床下点検口の蓋、ビフォー。

無事に賃貸借契約も済み、入居者さん側で依頼したシンクの設置工事も着々と進んでいました。

ちょうどよい場所に点検口が!

そして、DIYでベニヤをカットして点検口の蓋を作ったそうなのですが、このままではせっかくの素敵なフロアタイルとマッチせず、残念な感じです・・・

ベニヤで作った点検口。給排水管の隙間も塞がないといけません。

しかし、ワク賃023は日本初のDIYサポート付き賃貸マンションです! 101号室にスタジオを構えているDIYER'S PARTYの石井麻紀子さんに早速相談したところ、フロアタイルの余りを利用して、見栄え良く加工してくれました。

こんなにきれいにクロアタイルを貼れるのですね!感動!さすが石井麻紀子さん!

そして、排水を繋ぐパイプがこのままだと逆勾配になっているので、パイプをカットしてきれいに繋ぎ、管につまずいたりしないようにとシンクを少し手前に出しました。この作業をやってくれたのは、たまたま当日別の部屋のDIY作業を手伝いに来てくれていた、福岡のDIY大家さん赤尾宣幸さん。「焼きたてのお菓子をオーブンから出して運ぶときに、引っかかったら危ないから。シンクと壁の間にできた隙間にはDIYで棚を作れば、物も置けて便利ですよ」と、棚用のベニヤも切ってくれました。DIYでここまでできるってすごい!

見てください!このきれいな収まり!

ほかの部屋のDIYでも大活躍してくれた赤尾宣幸さん。 DIYで有名な大家さんです。

この後、無事に菓子製造業の許可も取得できたそうです!

まだあります!住まいで仕事をしたいときの注意点

主な用途が住まいであり、そこで仕事もするというのはもちろん禁止ではないのですが、ここまで読んでくださった皆さんには、管理会社からの注意点をお伝えしておきます。
特に注意してほしいのは、その仕事を事業として行う場合です。一般的な居住専用の賃貸住宅では、そこを会社として登記したり、郵便受けや玄関ドアの表札に会社名や屋号を出すことは想定されていないので、そのような使用をしたい場合には大家さんや管理会社に相談が必要です。主としての用途が住まいであれば、たいていOKがもらえると思います。もともと「SOHO可」で募集されていた場合でも、いつの間にか事務所使用をしていると誤解を受けないためにも、連絡はしておいた方が良いと思います。
住まいではなく完全に事業用に使いたいという方もいると思いますが、その場合は先に挙げた用途地域の問題や、家賃にかかる消費税の問題、大家さんが支払う土地の固定資産税の問題などが出てきます。たとえ小規模でも、専用の事務所や店舗は建てられない用途地域がありますし、住まいの家賃にはかからない消費税が、事業用の家賃にはかかりますし、住宅用途の建物が建っている土地は固定資産税が軽減されているので、住宅以外の用途になると金額が変わってしまう場合があります。

今までとは違う建物の使い方をしたいという人は、今回お話したようなさまざまな知識についてもぜひ勉強していただき、それらをふまえて大家さんや管理会社に相談すると話が早いと思いますし、願いが実現する可能性が高まると思います。
私たち管理会社もまだまだ知っておかなければならないことがたくさんありますが、しっかり勉強し、もっともっと皆さんのニーズに答えられる物件を増やしたいと思っています!

文:伊部尚子

  • この記事を書いた人

伊部 尚子

独立系の賃貸管理会社ハウスメイトマネジメントに勤務。仲介・管理の現場で働くこと20年超のキャリアで、賃貸住宅に住まう皆さんのお悩みを解決し、快適な暮らしをお手伝い。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。好きな工具はBOSCHのコードレス電動ドライバー。DIYアドバイザー、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター、CFP®

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