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《 世界のワクワク住宅 》Vol.046

月をテーマにした壮大なリゾート開発計画<MOON>〜トロント/バンクーバー(カナダ)

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月がきれいな夜には、私のインスタグラムやフェイスブックのフィードは友人たちが投稿した月の写真でいっぱいになる。中秋の名月を愛でたり、欠けた月の趣を十三夜に感じたり。それぞれの場所から同じ月を見上げ、不思議な連帯感に包まれる。昔は歌を詠むのが常だっただろうが、気軽に写真を見せ合うことの根底にあるのもまた、この美しさを心に留めたい、他者と共有したいという気持ちにほかならない。

地球に一番近い天体でありながら、これまで12人しか訪れたことのない場所。いつの時代も、そして洋の東西を問わず、月は神秘的な場所と見なされ、人間にとって近くて遠い存在である。
先ごろ、月をテーマにした総合型リゾートがアメリカのラスベガスを皮切りに世界4箇所で開発される計画が発表され、注目を集めている。今回は月を模した巨大な球体型ホテルと月を訪れたかのような体験を提供する壮大なプロジェクト「MOON」をご紹介したい。

MOONのラウンジエリア

まずはその概要から。
MOONはカナダのトロントとバンクーバーを拠点とするムーン・ワールド・リゾーツ社が手がける一大プロジェクト。ブレインは起業家のマイケル・ヘンダーソンとサンドラ・マシューズの両氏で、建築デザインと知的財産のライセンスの提供を行うことに主眼を置いている。

まずは50億ドルを投じて世界で一番大きい球体型の建物をラズベガスに建築し、ホテルとして運用する案が2026年を目標に進行中である。実際の建設はまだだが、いくつかのグローバル企業が出資の意向を示している。
そのほか、ヨーロッパ、中東湾岸諸国、アジア・太平洋地域でも同じ計画を展開する予定だ。マイケル氏によれば、具体的にはアラブ首長国連邦、サウジアラビア、スペイン、イタリア、日本、中国、シンガポールなどが候補地として上がっているそう。

5,000人の収容キャパシティーを誇るイベントセンターはさまざまなアートイベントに対応可能

ライセンシー(ライセンスを与えられる側)に想定されるのはエンターテインメント、ホスピタリティ、またはテクノロジーに特化した企業で、単体、または複数のMOONリゾートの運営権が与えられる。当然、MOONを実現するにあたり、ライセンシーには建設地の適合性、運営に適した専門性、財政的能力などが求められる。

サンドラとマイケルの両氏は共同でこう表明している。
「MOONはエキサイティングな宇宙ツーリズムに誰もが参画できるためのかけ橋となります。イーロン・マスク、ジェフ・ベゾス、リチャード・ブランソンといった面々が華々しく次のフロンティア市場として宇宙へと乗り出す傍で、MOONはこの地球でダイナミックかつ本格的な月の体験を提供します。それもほんの一握りの人たちだけでなく、すべての人に対して」。

具体的なプランにはワクワクするような要素がふんだんに盛り込まれている。

こちらはドバイを想定したイメージデザインだが、きらびやかな街並みの中心に鎮座する球体の大きさにまず驚く。高さは土台を含めて224メートル、横幅は198メートル。(参考までに渋谷のスクランブルスクエアの高さが230メートル、築地の聖路加タワーが220メートルである)。

5つ星クラスのスイートルームのイメージ

実際の月に比例すれば7.5万分の1のサイズに過ぎないが、4,000の客室を構え、敷地内にはショッピングモール、スパ、劇場、クラブ、カジノなどが含まれるというから実に壮大なプランだ。

球体と銘打った建物はよくあるが、実際のところは安定性を保つためにドーム構造である場合が多い。しかしMOONはディスクと呼ばれる3層の土台部分に諸々の共有エリア・施設を、月を模した完全な球体の中に客室を収めている。

見所となるのはこの球体の上部、地上から123メートルの高さにある「ルーナー・サーフィス」。その名の通り月面をイメージした空間だが、ここに月面コロニーをつくることが計画されている。コロニーとは人間が地球以外の天体に居住するための人工居住地だが、月に建設するコロニーを想定し、試験的にMOONの球体内で展開するというわけだ。広さは10エーカーで、「現在NASAやESA(欧州宇宙機関)が真剣に取り組んでいる月面コロニーに忠実に倣うもの」になるという。

宿泊客はここを「ムーンバギー」に乗りながら、90分をかけて探索することができる。月面のクレーターの上を進む感覚・・・ガタガタ?それともビューン?一体どのようなものになるのだろう。

また、ルーナー・サーフィスに行くには客室の途中階にある「シャトル・ステーション」から「ムーン・シャトル」に乗って上がる。ラスベガスやドバイといった世界有数のエンターテイメントスポットに建設予定とあって、こうしたアトラクション的要素には抜け目がない。この体験料は500ドルに設定されている。
うがった見方をすれば、月面探査の疑似体験を提供するにあたり、リアリティーの追求よりはエンターテイメント要素が色濃くなるのではと想像する。それでも、民間人が宇宙に行ける可能性は低く、行けたとしても一人20万から25万ドルかかると言われる現状を考えれば、こうした形で宇宙旅行の一端を体験できるMOONには十分な価値があるだろう。

簡単に施設内の各箇所のイメージ案も紹介しておこう。

MOONのシアター。常駐のロングランショー、ゲストを招いたショーなどが想定されている

カジノ

こちらはMOON 内のナイトクラブ。イメージされているのは宇宙人の宇宙船!世界的DJやアーティストを招いたパフォーマンスやレイブを行う予定だ(余談だが、ラスベガスで活躍するカリスマDJともなると一晩で20万ドルほど稼げるというので、彼らであれば本当に宇宙に行けてしまうのかもしれない・・・)。

ショッピングエリア

スパとウェルネス・センターは、月面の疑似体験を楽しんだ後の身体を癒す場所。緑をふんだんにあしらった空間で家族連れでも楽しめそうだ。

46,000平方メートルの広さを誇るコンベンション・センター

そして最後は「グローバル・ミーティング・プレイス」と「クレーター・カフェ」。講演、会議、商談のスペースとして利用可能で、複数階にわたるラウンジバーが特徴となっている。

真っ黒な背景に半月が浮かぶ、プロモーション用のデジタルイメージ。かつてニール・アームストロングが残した名言「人間にとっては小さな一歩だが人類にとっては偉大な飛躍である」に倣い、こう記されている——「その小さな一歩を今あなたが踏み出す」。

マイケル氏に取材したところ、このようなメッセージを寄せてくださった。
「日本の皆様がMOONに興味を示してくださることを確信しています。あるいは日本にMOONを建てたいと思ってくださるのではないでしょうか。MOONは未来志向のテクノロジーの最先端を余すところなくご紹介しますので、ご期待いただきたいと思います」。

今年に入り、民間による宇宙への試験飛行がたびたびニュースになっている。商業飛行や宇宙ツーリズムもこの先どんどんと本格化していくだろうが、安全性やコストの面でのハードルはそうたやすく越えられるものではない。そんななか、月を目指す思いが一足早くリゾートとして結実しそうなMOON。多くの人に夢を与える場所となるに違いない。

写真/All sources and images courtesy of Moon World Resorts Inc.

https://www.moonworldresorts.com

取材・文責/text by: 河野晴子/Haruko Kohno

 

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河野 晴子(こうの・はるこ)

キュレーターを経て、現在は美術を専門とする翻訳家、ライター。国内外の美術書、展覧会カタログの翻訳と編集に携わる。主な訳書・訳文に『ジャン=ミシェル・バスキア ザ・ノートブックス』(フジテレビジョン/ブルーシープ、2019年)、『バスキアイズムズ』(美術出版社、2019年)、エイドリアン・ジョージ『ザ・キュレーターズ・ハンドブック』(フィルムアート社、2015年)、”From Postwar to Postmodern Art in Japan 1945-1989”(The Museum of Modern Art, New York、2012年)など。近年は、展覧会の音声ガイドの執筆も手がけている。

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