《 ワクワク賃貸妄想中 》番外編Vol.002

日本のタイニーハウス大集合!~『TINYHOUSE FESTIVAL 2019』レポート

投稿日:2019年11月28日 更新日:

13戸の「タイニーハウス」をご紹介します!

「タイニーハウス」という住宅用語をご存知でしょうか?
この用語に正式な定義はなく、たとえば「ミニマルライフ」「タイニーハウス」「多拠点居住」など暮らし方の選択肢を増やし、「住」の視点から新たな豊かさを定義・発信しているYADOKARI株式会社の相馬由季さんは「可動性があり、最小限のお金で手に入る、小さな家」と説明されています。
一般的にはトレーラーハウスやキャンピングカーと違って、「DIYで自作する」という要素が含まれているのがタイニーハウスだと考えている方が多いようです。
その定義はともかくとして、世界中にはユニークなタイニーハウスがたくさんあり、ピンタレストで画像収集するほどタイニーハウスが好きな私にとって、実に嬉しいイベントが11月2~4日の3日間、南池袋公園(東京都豊島区)で開催されました。
その名も「TINYHOUSE FESTIVAL 2019」。
日本中にある13戸のタイニーハウスが南池袋公園に集まり、中にも入れていただけると聞き、すぐさま主催者であるHandiHouse project代表の中田裕一さん、中田理恵さんに取材を申し込みました。
すると快諾くださっただけでなく、出展者全員にインタビューする機会も設けてくださったので、「ワクワク賃貸®」の新・ライター、シマムラアサミさんと一緒に取材をしてきました。
「タイニーハウスを活用した新しいライフスタイル」「生活に必要な設備が整ったタイニーハウス」「お手軽な庭での小屋ライフ」「ビジネスシーンでも活躍を見せるタイニーハウス」「各地で増加中の“移動できるショップ”型タイニーハウス」という5つの切り口から、全てのタイニーハウスをシマムラさんにレポートしていただきます。

「TINYHOUSE FESTIVAL2019」を主催された中田裕一さん、中田理恵さん

タイニーハウスを活用した新しいライフスタイル

「タイニーハウス」と聞くと、もちろん“家”が想像されるけれど、この車だってタイニーハウス。
ベンツのバンをDIYして夫婦が暮らす動く家、「Van à Table」です。

オーナーの渡鳥ジョニーさんは、初めはひとりでバンライフを送っていて、当初は永田町にある24時間利用可能なシェアオフィスを契約し、そこのシャワーやキッチン、駐車場などを活用して暮らしていました。

この時に、「都心はシェアの集積効果が高く、賃貸や購入という選択肢以外でも、豊かに暮らせる」ということを実感したのだそう。

© Van à Table

© Van à Table

そして、妻であるはる奈さんと出会って結婚。
バンは夫婦ふたりの家となり、全国を旅しながら暮らしています。

おふたりのお仕事をお聞きすると、ジョニーさんはWEBデザイナー、はる奈さんは防災コンサルタントとフードデザイナーとのこと。
多様な働き方が認められ、居場所を選ばない仕事が増えてきたこともあって、“バンで全国を旅しながら暮らす”という新しいライフスタイルも可能になってきたのでしょうね。

現在は長野県にある富士見森のオフィスを拠点としながら、家でもあるバンと共に旅へと出かけます。
「Van à Table」の名のごとく、バンを停めた場所にテーブルを出せば、そこは特別なレストランに。
旅先で名もない絶景を背景に食事を楽しむのは、バンライフの醍醐味のひとつです。

家を借りるのではなく、景色を借りながら、おふたりは新しい暮らし方を楽しんでいるようでした。

© Van à Table

さて、気になる車内にお邪魔してみると、中にはキッチンカウンターやソファがあって、まさに家。
インテリアや雑貨がとてもおしゃれに、そして限られたスペースに無駄なくディスプレイされていました。
コンパクトな空間ならではの工夫があちこちに施され、たとえば右奥に見える鏡を置くことで奥行き感がプラスされています。

おふたりは普段から食材を買ってきて、こちらで食事を作っているのだそう。 旅行と違って、長期的な“暮らし”をしているので、料理ができる環境は必須です。

© Van à Table

シンク下を覗くと、タンクが設置されていました。
もちろん排水もしっかりできるようになっています。
ですが、スペースは有限。
水だけでなくゴミもそうですが、なるべく使わずに出さない工夫はバンライフには欠かせません。

そしてソファの向かい側には収納棚が。 こちらはジョニーさんがプロの手を借りながらDIYしたもので、細々したものをスッキリ収納できるようになっています。 さらに中央の一見壁のようなところを引っ張りだすと、ベッドへ変身。

© Van à Table

「据え置きにするとスペースがもったいないので、収納できればいいな」と思ってこの形にしたのだそう。

ヒーターは備えていますがエアコンはないので、ひんやりとしている長野は拠点としてピッタリ。
季節や気候に合わせて、居場所をさらりと変えられる身軽さも、バンライフの魅力ですね。

おふたりは、自分たちがこの暮らしをして必要だ、不便だと感じたことを情報として蓄積していき、それを解決できるような開かれた拠点を作りたいのだそう。
個室としてタイニーハウスを使い、個室以外の機能を拠点である母屋が担う。
自分たちを含めたタイニーハウス仲間がそこを拠点とし、集まっては旅立っていく、そんな場所。

「House-less,But Home-full.つまり、建物としてのHOUSEではなく居場所としてのHOMEをたくさん持つことができれば、災害などで困ったときも支え合えます」というジョニーさんの言葉が、深く心に残りました。

そんなおふたりが描く未来を一足先に形にしているのが「SAMPO.inc」
家を機能で分割して考え、トラックに乗せた個室は自由に動き、拠点となる場所にはキッチンやトイレ、シャワーなどを備えた母屋が常にある。
つまり「ドッキングする家」という、新しい都市型の住まいコンセプト。
現在は東京に4ヶ所、埼玉に1ヶ所の拠点を持ち、約30台のタイニーハウスがそこを拠点として暮らしています。

車内を覗いてみると、コンパクトな空間に個性がぎゅっと詰まっていました。
実際にこのタイニーハウスのオーナーはここで暮らしているのだそう。
「でもどこに寝るの…」と思ったら、トラックの運転席上部のところにベッド空間があるとのこと。
後方部には薪ストーブも搭載していました。

趣味や音楽、仕事をこのパーソナルな空間で楽しみ、ときには部屋ごと旅に出る。
でも、拠点に帰れば仲間もいて、共用スペースがあって、きっとそこには「Van a Table」のジョニーさんが言っていた“HOME”があるのでしょう。

生活に必要な設備が整ったタイニーハウス

タイニーハウスでの暮らしが少しイメージできたところで、現実的に必要な設備や要素について考えてみましょう。

こちらは「えねこや」のタイニーハウス。
斜めに張られた屋根にはパネル4枚(1kW)の太陽光発電を搭載していて、自家発電が可能です。
電力会社からの電気供給に頼らず、太陽光発電システムなどを利用して自家発電して自給する取り組みを“オフグリッド”というのですが、こちらはまさにそれを実現したタイニーハウス。

牽引して運ぶタイプなので、車輪付き。
拠点となる場所に滞在もできるし、いざとなれば牽引車に引いてもらって移動も可能です。

中にお邪魔すると、木の温もりがあふれる約5帖の空間が広がります。
天井の勾配があるおかげか、思ったよりも開放的!

正面左にはペレットストーブ(※再生可能で、木を植えることでCO2排出がゼロとなる木質ペレットを利用したストーブ)が備わっています。

一般的なペレットストーブは、ペレットを落としたり送風したりするための動力として電力を使います。
ですが、それだと災害時に電気が途絶えると使えません。
そこで開発されたのが、こちらの無電力式のペレットストーブ。
電力を使わず、重力でペレットが落下して、輻射熱で暖める仕組みでできているのだそう。

薪ストーブを搭載するタイニーハウスもありますが、煙が出にくいという点でペレットストーブは街中でも利用しやすいのがメリット。もちろん普通の住居にも設置可能で、環境問題を重視する方に注目されている暖房器具のひとつです。

こちらは蓄電システムのコントローラー。
ベンチの下にディープサイクルバッテリーを4台直列で連結して使っています。

室内に備わっているエアコンは、自家発電した電力で利用することができます。
ウッドファイバーで断熱していることと空間がコンパクトなことから、少ない電力と時間で室内は適温に。
いくらエアコンを利用しても、断熱がしっかりされていないと快適温度の維持効率が悪くなります。
なるべく電力に頼らず快適温度を保つには、まずしっかりと断熱されていることは前提条件なのです。

入口側にはミニキッチンが備わっていて、冷蔵庫も設置。
健康的で経済的な暮らしを続けるために、やはりキッチンは必須です。

一般社団法人えねこや代表理事で建築家の湯浅剛さんは事務所をオフグリッドにし、「エネルギーに頼らないオフグリッドな家や暮らしを、興味のない人にどう広めるか」と考えていて、タイニーハウスというワクワクする空間を通してその想いを広める活動をしています。
なので、湯浅さんのタイニーハウスには、子どもだけでなく大人もワクワクしてしまう小窓付のロフトベッドも備わっています。

タイニーハウスを作るにあたっては、クラウドファンディングで資金の一部を賄い、支援のお礼としてタイニーハウスのDIYイベント参加権利を提供したのだそう。
「電気は自分でつくれるということを伝えたい」という湯浅さんの想いが、きっとイベント参加者は十分実感できたことでしょう。

こちらもキャンピングカーとして登録しているタイニーハウス「Tree Heads & Co.」
イベント時は外されていましたが、普段は太陽光パネルを搭載しているので、自家発電が可能です。

左側の白くペイントされた収納庫のような中に蓄電池を搭載。
室内にあるとスペースが多く取られて圧迫感が出てしまいますが、居住スペースの外に設置するというのが、小さくて大きなひと工夫です。

室内に入ってみると、ヴィンテージ感あふれる空間が。
三角屋根やロフトの小窓が解放感をさらにアップさせてくれます。
収納が豊富なので、暮らすことをイメージした時にとっても現実的な気がします。

タイニーハウスライフで拠点をどこかに持っているとすると、そこが共用のLDKの役割、そしてタイニーハウスは個室の役割を果たします。
なので、私物を収めるために収納力は意外と大事。
限りある空間なので、むやみに物を増やすことはできませんが、必要なものをしっかり持ちつつ、スッキリ暮らすには“豊富な収納”も不可欠要素のひとつなのでしょう。

お手軽な庭での小屋ライフ

ここまではタイニーハウスを“メインの居場所”とした暮らしのイメージでお伝えしてきました。
ただ、その暮らしに憧れつつも、なかなか一歩踏み出せないのがホンネだったりします。

そんな方におすすめなのは、「お庭のほったて小屋作戦」。
メインの住まいはありつつ、サブの個室としてタイニーハウスを活用するのです。

こちらは暖かい家づくりに取り組む「エネルギーまちづくり社」、通称「エネまち」のタイニーハウス。
2トントラックに乗るサイズなので、運ぶのはラクラク。
さらに、上げ下ろしが簡単な仕組みなので、大人ふたりでトラックに積めてしまうのだそう。

中に入ってみると、木箱のような空間が。
代表の竹内昌義さんにお聞きすると、「様々な使い方ができるように、シンプルな状態で提供している」とのこと。
家具を置いたり棚を設置したりとフレキシブルに活用することができそうですね。

エコな暮らしを実現させるために、断熱はしっかり。
屋根、壁、床に使用されている断熱材「ネオマフォーム」が、暑くも寒くもない空間を支えています。

昔から庭にほったて小屋を見かけることはありましたが、そこで暮らすというのは一般的ではありませんでしたし、暮らそうと思っても長続きしませんでした。
それは、夏は暑くて冬は寒かったから。
東京で庭に置いておいても快適に過ごせる程度の断熱がされていれば、小屋暮らしはぐっと現実化していきます。

子ども部屋や書斎、大型収納が欲しいけれど、今の住まいにスペースのゆとりがない。
そんな方は“家の外に個室をもつ”という考え方もアリかもしれません。
庭があれば庭がベストですが、オーナーが許せば駐車場などのスペースに置くこともできるかも?

個人的には将来の子どもの個室問題に直面していたところなので、マンション前の駐車場に、子ども部屋としてこのタイニーハウスを置けないか、安全に暮らせないかと本気で考え中。
いつか子どもが巣立てば、子ども部屋は不要になります。
大きな家に住み替えるのではなく、必要な時期だけ個室を増やす。
そんな一見不可能そうな願いを、タイニーハウスはさらりと叶えてくれそうで、なんだかひとりワクワクしています。

続いてこちらは伝統工法の木組みで家づくりを行っている、「杢巧舎(もっこうしゃ)」のタイニーハウス。
なんでも、代表の木村真一郎さんが自分だけの仕事部屋が欲しくて作ったのが始まりだとか。

他のタイニーハウスと違って、キャンピングカーでもなければ、牽引もできないし、軽トラにもこのままでは乗りません。
ただ、接続部に金物を使わない伝統工法で組み立てているので、解体して運ぶことが可能。
今回のイベント会場にも、一度解体して運んできて、こちらで半日ほどかけて組み立てたのだそう。

「杢巧舎」では天然乾燥させた木材を使用しています。
最近の木造戸建てによく使われるのは工場で大量生産された「プレカット」の木材。
2時間で仕上がる高温乾燥をしているため、木が本来持っている油が抜けてしまい、木の寿命が短く腐りやすいそうです。
一方、天然乾燥には2年という長い月日がかかりますが、木の寿命は1000年以上。
表面は綺麗に保持できるけど中に割れが出やすいプレカットの木材とは逆に、天然乾燥の木材は表面に割れが出やすいのですが、芯はしっかりと保たれるのだそう。
「木組みという製法では、サビなどで劣化しやすい金物を使わずに組み立てるので、その点でも長持ちする」と、木村さんは言います。

「100年後に感謝されるために」という想いを大事にする「杢巧舎」。
スクラップ&ビルドで次々新しいものに建て替えるのではなく、木材選びや伝統工法にこだわり家づくりをするその考え方には、きっと共感する方が多いはずです。
移動こそ気軽にできませんが。お庭にこんな小屋があったら、なんだか豊かな暮らしが送れそうではないですか?

続いては可愛らしい見た目が特徴の「断熱タイニーハウスプロジェクト」へ。
グラデーションの外観がなんとも個性的で、大きさとしてはコンパクトながら、かなり視線をもっていかれるタイニーハウスです。

スクエアの窓から笑顔をふりまくのは、大学で都市環境や街づくりを学んでいた沼田汐里さん。
学生時代に「セルフビルドできるタイニーハウスを作ろう」とこのプロジェクトを立ち上げたのだそう。

「なぜ断熱?」という問いには、「エネルギーって何てわかりにくい授業なんだろうと当時から思っていて、断熱等級の難しい数字や理屈抜きに、実感として『暖かい』『暑くない』を実感してもらいたいんです」と笑顔いっぱいに答えてくれました。

沼田さんは学生の時、夏の暑い日に断熱空間を体験し、その温度差に感動したのだそう。
「断熱=暖かい」という冬にぬくぬくできるイメージはあるけれど、「断熱=暑くない」という夏のメリットも実は大きい。

沼田さんのタイニーハウスにはエアコンこそ付いていないけれど、しっかり断熱した空間はエアコンなしでも一年中快適なのでしょう。
エネルギーを使わずに快適温度を実現できる。
エコな小屋暮らしのベースは、やはり断熱機能にありそうです。

続いては、ちょっと変わったタイニーハウスをご紹介。
これが庭にあったら、ご近所で一躍有名人になれそうな珍しい機能が備わっています。
さあ、中はどうなっていると思いますか?

なんと、サウナが設置されていました!
その名も「サウナトラック」。

サウナ設備を搭載していて、薪で石を熱く熱せば、車内はサウナルームに大変身。
アツアツの石に水をかければ、さらなる熱気が立ち上がり、スチームサウナ状態になります。

「なぜサウナを…?」とオーナーの齋藤浩一郎さんに伺うと、「八ヶ岳ふもとの湖畔で開催される『日本サウナ祭り』のチケットが取れなくて悔しくて」とのこと。
湖畔に様々なタイプのサウナがずらりと並び、サウナで体をたっぷり温めた後に、冷たい冬の湖にダイブしてその温度差や特別感を楽しむ、というのがそのイベントの醍醐味らしい。
なので、齋藤さんはサウナトラックを日常使いするのではなく、時々湖畔に出掛けて、水風呂代わりである湖とともにサウナトラックを満喫しているのだそうです。

トラックの上部は人工芝が敷いてあるので、外気浴も楽しめます。

「サウナトラックは販売していないのですが、製作を手伝うことはできます」と齋藤さん。
お庭にサウナ。
なんて新しく、ワクワクする響きなのでしょう。

さて、次は……と歩いていると、他とは一風違うタイニーハウスを発見。
近づいてみると、それは子どもたちの絵が描かれた木箱で構成されていました。
こちらは「リノベーションサークルDaBo」がイベント会期中にこの場で組み立てたというタイニーハウス。
子どもたちと作った木箱は家の柱の役割を果たし、しっかりと木の家を支えています。

今までご紹介してきたものは、暮らせる・過ごせる個室としてのタイニーハウスでした。
でも、このようにみんなでDIYを楽しんで作った、子どもが喜ぶ大きなおもちゃかのようなものだって、タイニーハウスなのです。

日曜大工の延長で、今度の週末にタイニーハウス、作ってみます?

ビジネスシーンでも活躍を見せるタイニーハウス

タイニーハウスがある暮らし、イメージするとどんどんワクワクしてきますね。
そんなワクワクをビジネスで生かしている企業も出てきていると聞いて、さらに会場を巡ってみました。

会場内で最大の広さを誇っていたのが、こちらのタイニーハウス「Seaside House trailer」。
「HandiHouse project」と「メイスンワーク」がコラボして制作中で、沖縄県の百名ビーチ沿いに開業予定の宿泊施設で客室やレストランとして活用されます。
建物の建設が不可能な場所なので、固定をせずに移動もたやすいタイニーハウスという選択肢をチョイス。
まだ制作途中なのですが、完成後は船で沖縄に運び、牽引して百名ビーチまで運ぶのだそうです。

中はタイニー(小さい)とは言い難いくらいの広々とした約15㎡のスペースがあり、2~3名ほどが定員になる予定。
最終的には家具やキッチン、水まわりなどが追加され、さらに現地ではウッドデッキも設置します。

© HandiHouse project

大開口の先には一面の青い海。
沖縄好きの私としては、素敵な宿泊施設の誕生が今から楽しみです。

こちらのシックなタイニーハウスは、同じく「HandiHouse project」が手掛けた「FLATmini」。
「クロススポーツマーケティング」が青森県の八戸駅前に2020年開業予定の「FLAT八戸」という多目的スペースに利用される予定です。

大きなアリーナ前の広場に「FLATmini」がいくつも並び、そこでは部活動が展開されます。
八戸に関係する個人や団体がそこで“得意”を提供し、地域の「学び場」や「遊び場」に。
時々しか利用しない設備や場所を常設してはもったいないと考え、タイニーハウスで必要な要素を足したり減らしたりしながら、機能させていくのだそう。

さらに、宣伝カーとしてこのエリアの中心地である新八戸駅にも出向き、「FLAT八戸」のPRにも一役買ってくれる「FLATmini」。
とっても合理的かつワクワクするプロジェクトが、今着々と完成に向かって進んでいます。

各地で増加中の“移動できるショップ”型タイニーハウス

最後にご紹介するのは、小さくて気軽に移動できる空間の代表格(?)であるフードトラックのようなタイニーハウス。

軽トラの荷台に収まるコンパクトな「タコトラ」は、タコス専門店のフードトラック。
トルティーヤを車内で焼くための機材を搭載しています。
オーナーがフードトラックを探していて、完成している市販品を購入しようかどうか悩んでいた時、「せっかくだから完成品を買うのではなく、オリジナル品を」という想いから生まれました。

外観イメージは、なんと「スニーカーの箱」。
外装は段ボールに近い素材感に仕上げています。

そして屋根を開け閉めする様子はまさにスニーカーの箱!
屋根を開けた時に高さが出るので、他のフードトラックと並んでも目を引きます。
設計者であるHandiHouse projectの坂田裕貴さんは「人は動いていそうな形態に集まる」と、この形を提案したのだそう。

そしてこちらのミニマムなデザインのタイニーハウスは「ポイトラ」。
「走る小屋とテーブル」というコンセプトをもち、約10人でシェアしながら様々なシーンで活躍しています。

シェアメンバーがポイトラで展開するビジネスは多彩で、本屋、コーヒーショップ、靴磨き、さらにはラジオや映画上映なども行うのだとか。

ポイトラという名前の由来は「ポイント オブ インターフェイス」、つまり相互接続点。
居場所を固定しない地域のコミュニティーとして、人が集まる場所づくりに挑戦しています。

ポイトラの使い方は、メンバー次第。
大きなテーブルは特徴的ですが、あえて設備などはシンプルにすることで、メンバーが多様に使えるようにしたのだそうです。

今はフードトラックのような飲食店だけでなく、物販やサービスなどの業態でも、常設店舗を持たずにビジネスを展開することができます。
タイニーハウスに暮らすのか、それともタイニーハウスでビジネスをするのか。
そして、今までになかったようなタイニーハウスの使い方は、これからたくさん生まれてくるのでしょう。

賃貸版タイニーハウスの登場も近いかも!?

シマムラアサミさんのレポート、お楽しみいただけましたでしょうか?
タイニーハウスにはさまざまなタイプがあり、それをつくった方たちの動機や目的もまたさまざまです。
しかし共通して言えることは、つくっている方、暮らしている方たちが実に楽しそう!ということ。
そしてタイニーハウスにはこれからの住宅や暮らしにも大きな影響を与えていく可能性が秘められているということです。
そう、タイニーハウスが賃貸物件として提供される未来も遠からず訪れるかもしれません。
現に「SAMPO.Inc」の方たちは、キッチン、トイレ、シャワーを備えた拠点をシェアして暮らしているという点では賃貸の未来形を早くも実現していると言えそうです。

©Yuki Soma

冒頭でタイニーハウスのひとつの定義を伝えてくださったYADOKARIの相馬由季さんは、アメリカなどですでに実現している「タイニーハウス・ヴィレッジ」を日本でも実現させようと活動されています。
これは広い敷地の中央に共用のキッチン、トイレ、バスルームを備えた平屋を置き、その周囲に賃借人たちが自作したタイニーハウスを並べ暮らすというスタイルです。
共用棟を賃借するという点ではまさに賃貸住宅の新たな形態とも言え、相馬さんは都内から1時間ほどのエリアで間もなくオープンを予定しているそうです。とても楽しみですね!

家はちっちゃいだけど、夢はでっかいタイニーハウス。 これからもますます注目していきたいと思います。

トップ画像提供:HandiHouse project
取材・文:久保田大介 シマムラアサミ

  • この記事を書いた人

シマムラアサミ

リノベーション住宅、暮らし、沖縄をメインテーマに活動するフリーライター。雑誌やWEBサイト中心に、インタビュー取材・撮影・執筆のために日々都内を駆け巡る。沖縄好きが高じて2017年3月にはダイヤモンド・ビッグ社から「子連れで沖縄 旅のアドレス&テクニック117」を出版。一方で、食の分野でも活躍。過去には自宅にて子連れ限定パン教室を主宰し、現在はフードコーディネーターとして企業や自治体、飲食店のレシピ開発を行う。

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