《 ワクワク賃貸妄想中 》Vol.042

借主さんが自分好みの内装にできる賃貸住宅を増やす方法

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賃貸住宅の内装はなぜオーナーさんが決めるのか?

「賃貸住宅は借主が暮らすのに、なぜ内装はオーナーさんが決めるのだろう?」
「なぜ自分の部屋の内装を、自分好みのものにできないのだろう?」
そんな疑問を持ったことがありませんか?
賃貸住宅はオーナーさんの所有物ですから、オーナーさんが内装を決めるのは当然だと言ってしまえばそれまでですが、借主さんの側からすると、気に入らない内装の部屋で暮らし続けるのは少々苦痛です。
私自身もそんな経験をしたことがあります。
学生時代に借りていた部屋は赤を基調とした内装の部屋(絨毯がピンク、建具が赤でした)で、駅からの距離、広さ、家賃などの条件が抜群だったので選びましたが、私は服ですら赤いものを選んだことがなかったので、内装への違和感はなかなか拭えませんでした(慣れましたけど)。
今も賃貸住宅に住んでいますが、実はクロスの上からマグネットシートを貼るなど、こっそり内装をアレンジしてしまっています。
退去するとき原状回復費用を支払えばいいや!との開き直りからやっていることですが、「もっと堂々とアレンジできたらいいのにな」とか、「内装を変えても原状回復費用を請求されない仕組みがあればいいのにな」などと考えることがよくあります。
自分がそうなので、同じように感じている方も少なくないのではないか?と思い、ではどうしたら合理的に、そしてオーナーさんも損をすることなく、入居者さんが自分好みの内装に変えられないかを考えてみました。

原状回復工事の考え方や流れが弊害のひとつ

入居者さんがDIYで内装をアレンジした部屋(「入居者インタビュー」Vol.006より)

まず、なぜ内装デザインを入居者側ができないのか、ご説明します。
最もネックになっているのは、おそらく「原状回復工事」と「次の入居者募集」との絡みです。
入居者側でユニークな内装にしてしまったとき、その方が退去されて次の入居者さんを探すためには「普通」の内装に戻さないと借り手がつかないのではないか?とオーナーさんは考えます。
多くの賃貸住宅では解約予告期間は1ヵ月前とされていて、解約の通達があったら、すぐに次の入居者さんを探し始めます。
オーナーさんや管理会社は、できることなら退去日までに次の方から入居申込みをいただきたいと思っていて、募集図面をつくったり、ネット広告を打ったりして募集をしますが、ここで重要な武器となるのは室内写真です。
室内写真は現状の写真を載せますが、内装がユニークすぎると次の入居者さんから敬遠される可能性が高まります。
現状とは違う写真を載せて、それが気に入って入居申込みをいただいたら、その写真に合わせて内装をやり直す必要も生じます。現状と募集用の写真は同じものを使わないと無用なトラブルのもととなるので、オーナーさんや管理会社からすると、変わった内装の部屋は困ることが多いです。
そしてもし退去後に、内装を入居者さんに決めさせてあげようとすると、そのプラン打合せに時間がかかりますし、決まってから工事を発注すると、入居開始が遅くなります。
遅くなった期間分は家賃収入減に直結するので、オーナーさんからすると選びたくない方法です。

内装工事期間中の家賃を入居者側で負担する?

上記のネックを解決するための方法はいくつかあります。
一番手っ取り早いのは、内装工事期間中に家賃が入ってこないという、オーナーさんにとっての不都合を解消すべく、入居者さん自身が引っ越しを遅らせ、内装工事期間中の家賃を負担するという方法です。
入居者さんの好きな内装にするためですから、金銭的な不利益は入居者さん自身に背負ってもらうという考え方ですが、でもこれにはひとつ大きな問題があります。
それは、家具や家電を新しい部屋に移せないから、前の部屋に置いておかざるを得ず、その結果、自分が退去する部屋の家賃と、新しい部屋の内装工事期間中の家賃が二重にかかるということです。これは痛い出費ですよね。
「全部の部屋の内装は諦めて、内装しない部屋に荷物を置いておけばいいじゃないか」と言われる人もいそうですが、ご自身が暮らすスペースもないですから、今度はホテル代などを負担しなければならなくなります。
入居してから内装工事をするという手もなくはないけれど、家具・家電がある状態でクロスや床材を貼り替えたりするのはとても大変で、養生費はかかるし、作業がしづらいから工事期間も長くなるし、その結果、工事代も高くなります。自分が暮らしている状態で、職人さんが部屋に入ってくるのも避けたいでしょうから、やはりあまり現実的な方法とは言えません。

内装を入居者さんに決めていただいてもオーナーが損をしない方法

入居者さんがDIYで内装をアレンジした部屋(「入居者インタビュー」Vol.006より)

このように、入居者さんが自分の好きな内装にするというのはなかなか難しいとのですが、きっといい方法があるはず。そう思って考え続けているうちに「ワクワク賃貸」でも採用している「空き待ちシステム」を使えば可能じゃないだろうかとひらめきました。
どんな方法か、簡単にご説明いたしましょう。
まずオーナーさんから、「入居者さんが内装を自由にアレンジしてもよい」という物件を登録してもらいます。
その物件は、変わったコンセプトは不要で、ごく普通の物件で構いませんが、大事な点がひとつありまして、それは満室の状態で登録をしていただく、ということです。
空いてから登録をすると、原状回復工事をして、普通に募集をしたくなるので、この方法には適しませんから、満室の状態で登録をしてもらいます。
入居者さん側は、登録された物件の中から、エリアや広さ、家賃などが合うものをチョイスし、空き待ち登録をしておきます。
空き待ち登録があったことはオーナーさんや管理会社に伝え、入居審査をやっていただきます。
「この方なら是非ご入居いただきたい」ということになったら、入居中から内装プランを考えておいてもらい、オーナーさん、管理会社にそれを伝え、承諾をいただいておきます。
そして、そのマンションに解約予告が入り次第、内装工事のプランや見積り作業を開始し、退去と同時に内装工事に入ります。
その内装工事期間中の家賃は、どのみち原状回復工事が必要だったわけですから、当然オーナーさん負担です。

あえて暗い内装にした部屋(「ワクワク賃貸物件集」Vol.055より)

内装工事費も、通常の原状回復工事費の範囲内であればオーナーさん負担。範囲を超える場合は入居者さん負担とします。
ところで、私の考えるプランの場合、内装工事はプロに頼むことを前提とすべきだと思っています。
入居者さんは「自分でできることは自分でしたい」と考え、DIYを希望されるかもしれませんが、オーナーさんからすると、その方の腕前がわからないので不安です。
そこで話がまとまらないのはあまりに残念なので、プロに頼んでいただくのがよいと思います。

言うは易し行うは難し・・・

古民家をカフェ兼住居に改装した事例(「小商い賃貸推進プロジェクト」Vol.009より)

内装を自由にアレンジしたいという憧れを持っている入居者さんにとって、このプランはそれを実現するために絶好の方法だと思います。
一方、オーナーさんにとっても、ご所有の物件が駅から少し離れていたり、古さが目立ってきていたり、駅近に新築マンションなど競合物件が次々とできていたりして、競争力に自信をなくしつつあるのであれば、ひとつの選択肢として検討いただく価値は十分あると思います。
しかし、このプランにも欠点はあって、パッと考えただけでも2つ浮かびます。
ひとつは、引っ越しは転勤や今の部屋の更新時期が近づいているなど、急ぎ判断して実行しなければならないことが多いので、いつ空くかわからない物件をずっと待っていられる人も少ないだろうということ。
もうひとつは、登録物件や登録者さんが相当数いないと、事業者(不動産業者)にとってシステムを立ち上げるメリットがないことです。
システムを構築するのは、手間も費用もかかるので、生半可な気持ちではできません。
「ワクワク賃貸」でも空き待ち登録は受け付けていますが、ワクワク賃貸物件が空くのと登録者さんの引っ越しのタイミングが合うことはそう多くなく、なかなかマッチしません。
何か良い方法がきっとあるはずだと思っているのだけれど、残念ながら今のところ思いつきません。この記事を読んで、「私の物件で試してほしい」というオーナーさんが現れたら実験してみる、という感じでしょうか。
現時点では「妄想」の域を出ず、申し訳ありませんが、きっと良い方法はあると思うので、このまま考え続けていきたいと思います。

内装を自由にアレンジできる賃貸マンション(「ワクワク賃貸物件集」Vol.055より)

文:久保田大介

  • この記事を書いた人

久保田 大介

『ワクワク賃貸®』編集長。有限会社PM工房社・代表取締役。 個性的なコンセプトを持った賃貸物件の新築やリノベーションのコンサルティングを柱に事業を展開している。 2018年1月より本ウェブマガジンの発行を開始。 夢はオーナーさん、入居者さん、管理会社のスタッフさんたちがしあわせな気持ちで関わっていけるコンセプト賃貸を日本中にたくさん誕生させていくこと。

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