《 コレクティブハウスの暮らし 》Vol.001

コレクティブハウスとは?

投稿日:2021年1月28日 更新日:

皆さん、はじめまして。コレクティブ研究家の久保有美と申します。

これまで、不動産総合コンサルティングの会社で賃貸物件の企画や管理・運営を仕事としてきました。一般的な賃貸マンションなどの企画ではなく、コミュニティ形成が育みやすい賃貸を主に企画してきました。そして今年(2021年)に独立し、長年目指してきた「コレクティブハウス」をこの「ワクワク賃貸」でコラムとして皆さまにお届けすることとなりました。

どうぞよろしくお願いいたします。

「コレクティブハウス」という言葉を初めて聞いたというかたがほとんどだと思います。
あるいは、テレビや雑誌で見かけたことがある、という方もいらっしゃるかもしれません。
その定義を簡単に説明すると、以下のようになります。

コレクティブハウスとは

それぞれの住戸とは別に共用空間を併せ持つ共同住宅。共用空間を中心とした場所の運営内容や方法を、居住者間の話し合いをもとに居住者で合意形成し、食事作りなど暮らしの一部を協同化する暮らし方・その住まいのこと。

日本で展開されているコレクティブハウスの多くは、賃貸住宅です。

コレクティブハウスの歴史は北欧、特にスウェーデン・デンマーク・オランダで今も多くあります。またアメリカではコウハウジングという名称で呼ばれていることもあります。 歴史については、今後も掘り下げてみたいと思っています。

日本において、一般的な賃貸マンションと大きく違うところは、
①マンション内に、自分の部屋以外に使えるスペース(=コモンスペース)があること。
②入居者がみんなで暮らしの運営を考え、協同運営を実施していくこと。
この2つが挙げられます。

建物・建築的な違いは、コモンスペースがあることが一番大きいです(図中のピンクのスペースがコモンスペースです)。

コレクティブハウスの入居者は共用部にあるコモンスペースを自由に使うことができます。
その使い方は入居者で話し合いながら決めていくという様式です。

この「入居者で話し合いながら決めていく」ということが一般的な賃貸と違う所の2つめです。
共用部分の使い方を「入居者で話し合いながら決めていく」というのは、入居者自身がどのように使っていきたいのか、どのように自分たちは暮らしていきたいのか、ということを話し合います。単なるスペースの使い方のルールを決めるということではないことがポイントです。

暮らしの一部を協同化するということです。

「暮らしの一部を協同化する」と聞くと難しそうですよね。暮らしの協同化については、またコラムで具体的に紹介していこうと思いますが、今回は実際に私が暮らしているコレクティブハウスの暮らしの一部をご紹介します!

★ コモンミール:晩ごはん(夕食)づくりの協同化

このコレクティブに住む居住者が、同じくここに住む居住者の夕食をつくります。 毎月1回は他の居住者分の晩ごはん(「ミール」といっています)を作ります。逆にほかの居住者さんが作ったミールを食べることができます。仕事から帰ってきて、知っている人が作ってくれた温かいご飯がある幸せといったら!

私は毎月決まって牛丼を作ります! 定番化しているので、私が当番の時は子どもたちも晩ごはんが牛丼だとすぐにわかるぐらいです。

晩ごはんを協同するだけでなく、コモンダイニング(みんなのダイニングスペース)で一緒にミールを食べることもあります(残念ながら2020年はコロナ禍で一緒に食事する機会は減りました)。

一緒のテーブルに家族以外の居住者と一緒に食事をすることもあれば、でき上がったミールを自宅に持ち帰って食べることもあります。このへんは自由です! 私は頼んだミールを翌日のお弁当にして会社に持っていくこともあります。

★ 緑の活動

私の住んでいるコレクティブハウスの敷地には庭と屋上菜園があります。
その庭と菜園の手入れも自分たち(入居者たち)でやることを決めて活動しています。

季節に応じて木々の手入れや草むしり、水やり、果実の収穫など、緑の活動を行います。
ハウスで育てている木々や花、野菜なども、話し合いなどで決めています。
ユスラウメや無花果(いちじく)は収穫して、コモンミールでデザートにしたり、ジャムに加工したりします。ほかにも柚子や山葡萄などいろいろな実のなる木がありますが、日々の手入れや気候によって実がならないとか、野生の動物や何者かに先に採られてしまって収穫できないことも……

たまに子どもたちも一緒にお手伝いをしてくれることもあります。

賃貸で暮らしていて、こんなことをやることは、めったにないですよね。 分譲マンションだと、管理組合でいろいろな活動をされているところもありますが、ここは賃貸。 賃貸でもこのように入居者の自主的な活動ができる暮らしがあるのです。

めんどくさいんじゃないかな?と思われることも正直多いです。

ミールの当番、掃除の当番、定例会という入居者の話し合い時間、緑の活動などなど……

休みの日はこの当番や活動でほぼ潰れそうになりますし、話し合いは3時間以上と会社の会議よりも長い時もあります……。

でも、この暮らしを自分で選んでいます。

ここが大事なところだと感じていて、「自分で選んでいる」からこそ、暮らしを楽しくしたいなとか、1人ではできないようなワクワクすることを賃貸でもできるんじゃないかと考えています。

独り身の私でも、ハロウィンを楽しく子どもたちと過ごす、なんてことは賃貸でなかなかできない気がします。

ハロウィン当日。お菓子を持っていなかったのでカメラを攻撃された。

最後に、私が考える、コレクティブな暮らしの要素としては3つです。

1)まわりとつながる
2)協同(助け合ってなにかをすること)する
3)フラットな関係性

何をもってフラットな関係性?と模索している途中ではありますが、誰かから与えられたサービスを受け身だけで過ごす暮らしではないし、誰かがリーダーとして仕切っているからできる暮らしでもないと思います。
私の考えるコレクティブな暮らしと、ほかの方が考えるコレクティブな暮らしは、違うと思います。違っていいと思いますし、それを大事にしたいです。
そもそも全く同じ考えの人というのはは、家族・血縁であってもいないのではないでしょうか?
個人を大事に、尊重することは、あらゆることで前提と言えるのではないかと感じています。このあたりは福祉と通じるところです。
コレクティブハウスでの暮らしを通して、暮らしのワクワクをつくる、それは1人だけでつくる・家族だけでつくるということではなく、さまざまな人たちと関わりながらつくっていける。そのしたことをこのコラムでお伝えしていければと思います。
どうぞよろしくお願いいたします!

▼コレクティブハウスについて詳しくお知りになりたい方はこちらをご覧ください。

文:久保有美

  • この記事を書いた人

久保 有美

不動産フリーエージェント。京都出身(京都いうても西の方) 好きな数字:3&9 宅地建物取引士 社会福祉士 賃貸不動産経営管理士 大学でコレクティブハウスという暮らし方に出会う。京都でコレクティブをやりたいと言い続け、建築会社・不動産コンサルティング会社を経て2021年に独立。 新たな暮らし方の提案、福祉と不動産の連携を目指す。

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