《 DIY賃貸推進プロジェクト 》Vol.017

賃貸住宅で大家さんや管理会社にDIYをOKしてもらえる方法《タオル掛けを壁に増やす編》

投稿日:2021年1月28日 更新日:

大家さんや管理会社にDIY をOKしてもらうには?

「DIYでもっと暮らしやすい住まいにしたい!」と思いつつ、「でも賃貸住宅だから無理だな」と諦めてしまっている方はとても多いと思います。でも諦めるのはまだ早い! 今回は、「どうやったら大家さんや管理会社にDIYをOKしてもらえるか?」に焦点を当て、具体的な方法を考えてみたいと思います。

「DIY可」物件でなくてもDIYしていいか聞いてみる

世の中には少しずつ「DIYが可能な賃貸住宅」が増えてきています。不動産情報検索サイトにも、「DIY可」で検索できる会社もありますし、「DIY可 賃貸 東京」などで検索してみると、DIY可能物件の情報が出てきます。
しかし、それらの情報を詳しく見てみても、どの場所にどんなDIYが可能なのか、原状回復しなくてよいのかなどの細かいルールがわからないものが結構あります。大家さん自身も「DIY可」という募集について、あまり理解していないものもありそうです。実際のところ、「DIY可」は、「ルームシェア可」「ペット飼育可」などと同じような感覚で「可にしておけば空室が決まりやすくなるかも」という軽い感じで記載してある場合が多いのではないでしょうか。相談してみないとOKかどうかわからないのであれば、「DIY可」と記載がない物件もあまり変わらないのかもしれません。
以前、「賃貸でDIYをするために、大家さん・管理会社の心理を知ろう![前編]」でも書いたように、たいていの賃貸借契約書には「賃貸人に承諾を得ないで工事を行ってはいけない」という趣旨の条文が入っているので、大家さんに「DIYしてもいいですか?」と聞くことはおかしなことではありません。
国土交通省が公表している「賃貸住宅標準契約書」の第8条の2にはこのように記載があります。

(※賃借人のこと)は、甲(※賃貸人のこと)の書面による承諾を得ることなく、本物件の増築、改築、移転、改造若しくは模様替又は本物件の敷地内における工作物の設置を行ってはならない。

おそらく皆さんが交わしている賃貸借契約書にも同様の条文があるかと思います。ですので、まずは大家さんや管理会社に対して「賃貸借契約書の第◯条の規定に基づき、DIYの申請をさせていただきます」という形で書面で申請するのが良いでしょう。

賃貸借契約書をしっかり読んでみましょう!

大家さんや管理会社が承諾しやすい申請にはポイントがあった

これも以前、「賃貸でDIYをするために、大家さん・管理会社の心理を知ろう![後編]」で書きましたが、大家さんや管理会社が承諾してくれやすいDIY申請のポイントをあらためて整理してみます。

DIY申請のポイント

  1. そのDIYで物件価値が上がる
  2. 施工に安心感が持てる
  3. 費用負担の心配がない
  4. 後々メンテナンスに困らない
  5. 長く大切に住んでくれる優良入居者である

この5つのポイントについて、実際のDIYを例にしながら具体的にどう申請するかを考えていきましょう。

今回行うのは、洗面脱衣所にタオル掛けを設置するDIYです。なぜこれを選んだかというと、賃貸物件にはタオル掛けが足りないことが多いと感じているからです。
たとえばホテルに宿泊するとバスタオルとフェイスタオルがありますが、その両方を住んでいる人の人数分掛けられるタオル掛けがある物件はほとんど見かけません。しかし、あると便利だと感じる人は多いのではないでしょうか。
これが、【そのDIYで物件価値が上がる】と大家さんや管理会社が思うであろうDIYです。賃貸住宅は入居者が入れ替わるのが当たり前なので、「次の入居者さんも喜ぶかも」と大家さんや管理会社が思ってくれることが大切です。大家さんや管理会社は保守的な人が多いので、あまりにマニアックなDIYは、理解を得にくいと思います。

自宅の洗面脱衣所は、タオル掛けが1つしかないので、床置きタイプのものを使っていましたが、掃除のときに邪魔でした。ここにタオル掛けがあったら便利!

設置するもの自体も、それなりの商品を選ぶ

タオル掛けにもさまざまな種類がありますが、何でもよいかというとそうではありません。商品選びも重要です。
タオル掛けを設置するためには壁に穴を開けないとなりませんが、大家さんや管理会社の思考回路では、「壁に穴を開ける=原状回復しなくては!」となるので、原状回復問題に発展させず、原状回復なしでそのまま残して次の入居者にも使ってもらうことを考えたほうが承諾は取りやすいでしょう。しかし、大家さんの気持ちになって考えてみると、汚れや傷の付きやすいプラスチック製のものや安っぽいもの、周囲の内装に合わないデザインのものを残して行かれるのは嫌ですよね。
今回私がタオル掛けを設置したい壁には、すでに1つタオル掛けがあり、フックもありました。それを観察してみると、TOTOの製品であることがわかりました。

現在のタオル掛けはシルバーで、丸いデザインです。

TOTOの文字が見えます。

そこで、似たようなタオル掛けがないかとTOTOのホームページで調べてみたところ、同じ丸いデザインで二段式のものがありました!

タオルが乾きやすいように二段式のものを探していました。

こんな感じに横並びに2つ設置する予定です。

私が管理会社の立場でタオル掛けの増設をするのであれば、すでに設置してあるタオル掛けと似たようなデザインや色のものを選んで大家さんに提案すると思います。DIYする際も、そういう考え方で商品を選ぶと承諾が取りやすいのではないでしょうか。

大家さんや管理会社に施工方法が伝わるようにする

大家さんや管理会社に安心感を持ってもらうには、まずはどの場所にどんなものをどうやってDIYするのかを、写真や図で伝える必要があります。
今回取り付けしたいタオル掛けは、「TY406W6 型」です。インターネットで検索すると、施工説明書がダウンロードできる場合が多いです。表からビスが見えない取り付け方法になっていることがわかります。

施工説明書を見せれば、どうやって取り付けるのかが伝わります。赤枠が今回使用する製品と施工方法です。

実際の製品はこのような感じです。

上側が取り付け壁だとすると、このような構造になっています。

タオル掛けを取り付けたい位置も伝える必要があります。壁にマスキングテープで印をつけて写真に撮ると、取り付けイメージが湧きます。

タオル掛けを設置する位置にマスキングテープで印をつけたところ。

実際の施工方法をお見せしましょう。まずはタオル掛けの左右の穴あけ位置を決めます。

こんな感じに設置予定。左右の壁に穴開けが必要です。

穴を開ける位置が決まったら、その部分の下地を確認します。石膏ボードや薄めのベニア合板で奥に木下地がなくスカスカの場合は、ビスがしっかり効かないのでタオル掛けがぐらついてしまいます。その場合は下地の厚みにあった中空アンカーを使用する必要があります。以前の記事「壁に正しく穴を開ける方法を学ぼう!」も参考にしてください。

今回穴を開けたい場所にはしっかりした下地がありました。 同じ壁の面に別のタオル掛けがある場合、それを外してビス穴部分を確かめてみるのも下地調べの参考になります。

下地があることがわかったので、そのままビス留めしていきます。ビスの場所に下穴を開けると作業が楽です。私は100円ショップのDIYコーナーで購入した千枚通しを愛用しています。

正しい位置に下穴を開けます。

今回のタオル掛けは、壁に取り付けた部品の左右の位置が少しでもずれると、穴位置がずれてしまってはまらなくなります。ビス留めの位置が重要な施工の場合は、電動工具ではなくドライバーを使って手で締めた方がいいでしょう。ちょっと曲がっても微調整ができるので向いています。

位置がずれず、まっすぐビス留めできるように、左右のビスを交互に少しずつ締めていきます。

できました!

上からタオル掛け本体をかぶせ、最後に短いネジで影に取り付けた部品に固定します。

上からタオル掛けを被せたところ。左右の部品の位置がずれていると、ちゃんとはまらないので注意が必要。

下からネジで固定して完成です!

タオル掛けを取り付けるだけでも、結構工程があることがおわかりいただけたかと思います。 下地を確かめ、アンカーが必要かを判断し、ビス位置を決め、穴をあける。これらの工程を大きな失敗をせずにきちんと施工できることを示さなければ、大家さんや管理会社は安心してOKが出せないのです。DIYされることに関して、大家さんや管理会社が【施工に安心感が持てる】という状態はどうやったら生み出せるでしょうか。

施工の安心感は、自分の技術と相談しながら

大家さんや管理会社は、プロの職人さんがリフォームしてくれることに慣れています。腕に自信のある人は「DIYが趣味で工具の扱いにも慣れています」と自分の技術力を示すのもアリだと思います。過去の作品の写真があればそれを見せるのも手です。 今までDIYをやったことがない人もしくは経験が浅い人の場合は、プロに手伝ってもらったり、アドバイスを受けたりすることを伝えるのが良いと思います。私も自分で難しそうな作業はDIYサポートをお仕事にされている合同会社クラディの石井麻紀子さんに施工サポートを依頼したり、アドバイスをいただいたりして施工しています。「クラディの石井さんにオンラインで施工サポートを受けながらDIYします」と言われたら、大家さんや管理会社の安心感が違うと思います。 もし自分が大家さんだった場合、初心者に壁に穴を開けたいと言われてOKするのは勇気がいりますよね。

実は楽をしようと最初は電動ドリルドライバーを使ったのですが、勢いよく斜めにビスが入ってしまってやり直しました。 DIYに失敗は付きものなので、大家さんに安心してもらうにはどうしたらいいかを考える必要があります。

大家さんに費用の心配をさせない

今回のように有名メーカーの製品はそれなりに値が張るので、それを「入居者負担で購入して設置し、退去時に残していきますよ」と言われたら、大家さんは「それなら得だな」と考えると思います。ホームページで設置予定の商品名や価格を示すのもよいと思います。
もしも施工が上手くいかなくても、有名メーカーの、しかも金属製のタオル掛けは頑丈そうですから、退去後のリフォーム工事のときにプロに取り付け直してもらえば問題なさそうです。しかし、大家さんは施工方法に詳しくない方も多いので、万一の取り付け直しや、元に戻したい場合の方法や費用の目安についても提示があれば、更に安心感は増すでしょう。【費用負担の心配がない】【後々メンテナンスに困らない】とは、そういうことを指しています。

もし位置を変えたくなったら、壁の穴を埋めて別の場所に設置し直すことも可能。

優良入居者には長く住んでもらいたい

管理会社勤務が長い私は、大家さんの賃貸経営が上手くいくには、「いい入居者さんに・長く・大切に」住んでもらうのが重要だと考えています。
退去が発生すると「リフォーム費用がかかる」「次の募集で家賃を下げないといけないかもしれない」「次の入居者が決まるまで家賃が入らない」という賃貸経営の三重苦がやってきますので、入居者さんにはなるべく長く住んでもらいたいのです。しかしその一方で、マナーを守らなかったり、部屋を汚したり傷つけたりする人に長く住んでもらっては困るのも事実です。
もしあなたがお部屋をきれいに使う良い入居者さんならば、「DIYを承諾することで長く住んでもらえるのなら悪い話ではない」と考える大家さんや管理会社は多いと思います。
しかし、大家さんや管理会社が、お部屋がきれいに使われているかどうかを知る機会はなかなかないのが普通です。あなたが【長く大切に住んでくれる優良入居者である】ことは、自分自身でアピールする必要があります。お部屋が気に入っていること、これからも長く住みたいことを文章できちんと伝えることができて、DIYしたい場所を示すための写真に写っているお部屋がきれいに整えられていたら、DIYを承諾してもらえる可能性はぐんと高まると思います。
参考にしてもらえるように、今回行ったDIYを管理会社に申請すると想定して、実際に申請書を作ってみました。
申請書に記載している賃貸借契約書の条文番号は、国土交通省の標準契約書に合わせています。 参考にしてくださる際は、ご自身の賃貸借契約書の条文番号をしっかり確認して作成してくださいね。
皆さんのDIY申請が上手くいくことを心から祈っています!

文:伊部尚子

  • この記事を書いた人

伊部 尚子

独立系の賃貸管理会社ハウスメイトマネジメントに勤務。仲介・管理の現場で働くこと20年超のキャリアで、賃貸住宅に住まう皆さんのお悩みを解決し、快適な暮らしをお手伝い。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。好きな工具はBOSCHのコードレス電動ドライバー。DIYアドバイザー、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター、CFP®

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