《 コレクティブハウスの暮らし 》Vol.005

高齢者と暮らすことで思考が深まるコレクティブハウス

投稿日:2021年5月20日 更新日:

皆さん、こんにちは。コレクティブ研究家の久保有美です。
私はコレクティブな暮らし方=「つながり、ともに働く、フラットな関係」という暮らし方について日々考え活動しています。

私の暮らしているコレクティブハウスには0歳児から70代までという多世代の人たちが暮らしています (2021年2月末現時点)。

多世代はコレクティブハウスの大きな特徴でもあり、今回は多世代で暮らすということについて、少し考えてみたいと思います。

今、私の暮らしているハウスでは、大人23人、子ども11人が暮らしています。世帯数は全部で20あり、そのうちいわゆる「高齢者」と言われる65歳以上の方がおられるのは3世帯で、皆さんお元気でハウスの当番や役割も対応されています。

ハウスには、鍵当番や掃除当番など、暮らしに関する係やグループがいくつもあり、全員が何かの役割を持っています。

コレクティブハウスは賃貸住宅ですが、普通の賃貸住宅とも、サービス付き高齢者向け住宅とも違います。過去4回の記事でもお伝えしているとおり、賃貸住宅でいう管理会社の管理対応や管理サービスというものはなく、コレクティブハウスに住んでいる居住者で自主運営をしています。鍵当番や掃除当番などは、この自主運営の中での役割です。

何か役割を持つことで、誰かの、何かの役に立っているという実感も持てることが、コレクティブハウスの自主運営の良いところだと感じています。

また、私の住んでいるコレクティブハウスでは、高齢者だからと言って、役割や当番を特別に免除するということはしていません。 年齢や性別などの決まりきった区分で考えることはなく、その人個人として、やりにくいこと、できないことは本人の意見を尊重し、どのように対応するかを話し合っています。

それは、コレクティブハウスが個人を尊重するということを大切にしているからです。たとえば体調が悪くなるのは高齢者に限りません、育休をとるのは母親だけではない、ということと一緒ではないかと思います。ですので、「私は〇〇をしたい」、「✕✕はできない」、ということをひとりひとり確認するようにしています。

こういった「個人を尊重しながら暮らす」ということはコレクティブハウスならではだなと感じています。血縁者である家族と暮らす場合、個人を尊重するということがどれだけできるのか?という疑問を私は考え込むことがよくあります。個人を尊重するということは、とても素晴らしいし、いつでもそのようにありたいと考えていますが、それが家族となると、とたんに考えが固定化する傾向にあります。

そして「家族って何なんだろう?」ということもよく考えます。

コレクティブハウスに住んでいる居住者は、前回のコラムの中でも少し書きましたが、 “家族でもない、友だちだったわけでもない、同僚なわけでもない、でも知人なんて遠慮がちな関係でもない、なんだか安心できる関係”です。年齢に関係なくそのように私は感じています。

夫婦、血縁家族だったら、言わなくてもわかってほしいと思ってしまうことも、ハウスの居住者のみんなには、そんなことは言えません。もともと他人で、言わなくてもわかるなんてことはありえませんよね(家族・夫婦も同じですね)。

最近、ちょっとおもしろいなと思ったことがありました。

私の食生活について、ハウスの居住者で両親と同じぐらいの年齢の方から指摘されたり質問されたりすることが日々あります。「甘いものばかり食べているけど、健康診断での結果は大丈夫なの?」「野菜もしっかり食べなさい!」「甘いのもなら何でもいいの? 何系が一番好きなの?」とか、その指摘や質問に答えていくことによって自分自身でも面白い発見をすることがあります。「そう言えば、フリーランスになったから健康診断は自分で手配しないとな」とか「チョコ系が好きだけど、クリーム系も外せないな」とか。

久保さんのお菓子食べすぎ問題

これが血縁である母親と話をしていたら、同じように感じることができたでしょうか? きっと「うるさいなぁ」と突っぱねてしまったのではないかと思います。 居住者さんも、母親も、私を心配してくれる気持ちは一緒なはずです。その気持ちの受け取り方が、わたしの中で違っているのです。そういうことって、皆さんはないですか?

家族ではない、いろいろな世代の方たちと関わりながら暮らすコレクティブハウス。
前回、子どもとの関わりの中でも楽しみを見つけることはできると書きましたが、ご高齢の方と関わる中でも、発見がたくさんあります。

人生経験が私より長い先輩方ですから、私が知らないこともたくさんご存知です。毎月の掃除の日に一緒に作業をしているときやコモンミールを手伝っているときに、たまたまエピソードとして聞いたり、教えてもらったりで、特別何か教えてもらう時間を取っているわけではありません。

また、逆にご高齢の方が知らないことを、私が知っていることもあるので、それを教えることもあります。たとえばスマホの使い方や、音声入力の方法など、ちょっとしたことで、私には簡単なことでも、経験したことがない方には、“ちょっとやってみる”ことも億劫だったり、難しかったりするようです。それを少しでもお手伝いできるのは、嬉しい瞬間です。

また、ご高齢の方は孫のような子どもたちからもいろいろと教えてもらうこともあるようです。たとえばはやりの歌なども教えてもらっています。でもこれは子どもたちが廊下で大きな声で歌っているときがあるので、教えてもらうというより、勝手に聞こえてくるというのが正解かもしれません(笑)。

いろいろな人と関わるコレクティブハウスの暮らしは、多少面倒だと感じることもあります。しかし、暮らしの中でさまざまな考えに触れることで、思考は深まり、幅が広がるのではないでしょうか。人と関わる暮らし、おすすめです!

文:久保有美

  • この記事を書いた人

久保 有美

不動産フリーエージェント。京都出身(京都いうても西の方) 好きな数字:3&9 宅地建物取引士 社会福祉士 賃貸不動産経営管理士 大学でコレクティブハウスという暮らし方に出会う。京都でコレクティブをやりたいと言い続け、建築会社・不動産コンサルティング会社を経て2021年に独立。 新たな暮らし方の提案、福祉と不動産の連携を目指す。

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