《 菓子工房賃貸推進プロジェクト 》Vol.014

ワンルームマンションの1室を菓子工房にリノベーション! 菓子工房へのリノベーションを検討していたオーナーさんと空き待ち登録者さんとのしあわせなマリアージュ(in池尻大橋)

投稿日:2023年6月22日 更新日:

オンライン公聴会から始まった出会い

所有している賃貸マンションを菓子工房にリノベーションしてもOKという不動産オーナーさんと企画段階で出会えたら・・・!
自前の菓子工房を持ちたいと願っている皆さんは、そんなことを夢想したことはありませんか?
今回はそんな幸運な出会いに恵まれた空き待ち登録者さんと一緒に、新しい菓子工房をつくった話をご紹介したいと思います。

私はPM工房社という小さな不動産会社を営んでいて、賃貸不動産の管理もしています。
今年(2023年)のはじめ、東急田園都市線「池尻大橋」駅近くにある賃貸マンションの1室をフルリノベーションする計画が浮上し、プランの一候補として菓子工房にする提案を準備していました。
ちょうどその折、建築家の方から「新築の菓子工房付き住居を検討している」という相談があり、菓子工房の空き待ち登録者さんたちにご協力いただき、オンライン公聴会を開きました(公聴会の模様はVol.009でご報告しました)。
そこに参加してくれた桜田さん(仮名)という方が、東急田園都市線沿線エリアで菓子工房を求めているとお聞きし、「今、池尻大橋で菓子工房をつくることを管理物件のオーナーさんに提案しようと思っているんですよ」と伝えたところ、非常に強い興味を示してくれました。
そこでオーナーさんに「菓子工房をつくったら借りることを前向きに検討したいと言ってくれている方がいるのですが、いかがでしょうか?」と正式に提案したところ、「強いニーズがあることがわかっていれば安心ですね」と言って菓子工房プランを採用してくださいました。
直ちに桜田さんに報告しましたら、数日間検討されたのち「是非お借りしたいです!」と意志表明をしてくださり、菓子工房づくりのマリアージュが成立しました。

空き待ち登録者さんと一緒にプランニング

リノベーション前の間取図。

こちらはリノベーションをする前の間取図です。
専有面積20.96㎡のワンルームマンションで、20年近く住んでくださっていた方が退去されることになっていました。
入居期間が大変長かったので、お部屋がだいぶ傷んでいて、またガス給湯管が老朽化していて交換する必要があったことから、部屋全体を解体し、フルリノベーションする必要に迫られていたのですが、単身者向け物件は余っている時代なので、オーナーさんからは競争力のある企画を求められていました。
物件所在地の用途地域(※Vol.005の記事を参照ください)は第二種中高層住居専用地域で、2階までであれば菓子工房をつくることが認められています。
今回、リノベーションを検討している部屋は2階で、建築基準法に定められている他の規定(たとえばマンション全体における菓子工房の面積の割合など)も満たしているため、菓子工房をつくることに問題はありません。
保健所に菓子製造業許可をいただくためには、この部屋に最低でもトイレの前室と工房内の洗面台を設置しなければなりませんが、全て解体してフルリノベーションをすることから、これもOK。菓子工房とする舞台は整っていたのです。

菓子工房プランの“たたき台”。

菓子工房にリノベーションするにあたり、入居を表明してくれた桜田さんのご意見を伺いながらプランニングを進めていくことにしました。
とは言え、ノープランでは桜田さんも困ってしまうと思ったので、はじめに私と当社のプランナーとで“たたき台”を考えてみました。それが上の間取図です。
“たたき台”プランのポイントは下記の通りです。

[“たたき台”プランのポイント]
  1. 菓子工房にするのであれば、三点ユニットバスを解体したあと浴槽やシャワーブースなどを設置する必要はないので、そのスペースにトイレと前室だけ設ける。
  2. トイレの前室は最小限にとどめ、トイレの横幅を従来より少し広げてトイレの中に手洗いを設置する。
  3. キッチンは幅1200mmの小さなサイズにし、その横に菓子工房用の手洗いを設置する。
  4. 照明器具はライティングレールを用い、照明の色や明るさ、量は入居者さん側で自由にアレンジしていただけるようにする。
  5. 冷蔵庫や電気オーブンを置きたいと思われるだろう場所にアース付きのコンセントを設置する。

この “たたき台”プランを考えたあと、桜田さんに見てもらい、ご意見を頂戴しました。
桜田さんは私たちのプランを気に入ってくれましたが、さらに次のアイディアを付け加えてくれました。

[桜田さんのアイディア]
  • 幅の広いキッチンを必要とする方も少なくないので、もう少し広げてみてはどうか?
  • IHクッキングヒーターでは火力が足りない場合もあるので、ガスコンロが望ましい。
  • ガスオーブンや200Vの電気オーブンも設置できるようにしたほうがいいのでは?

これらは桜田さんが将来退去されたあとも、人気の菓子工房とできるようにと配慮してくれたアイディアで、本当にありがたいことだと思いました。
これをふまえて、今回施工をお願いした工事会社さんに現場を調査してもらったところ、トイレと前室の位置は逆にしないと天井の梁をよけられないと指摘されました。

桜田さんと工事会社さんの意見を加えて練り上げたリノベーションプラン。

桜田さんのアイディアや現地調査の結果を反映し仕上げたのが上記のプランです。
桜田さんにはその後、部屋全体や設備のカラーコーディネートもしてもらい、リノベーションプランができあがりました。
工事は3月下旬から開始し、GWを挟んで5月中旬に完了しました。 完成した姿をご覧いただきましょう。

リノベーションして完成した菓子工房

こちらが桜田さんと一緒にプランニングし、つくりあげた菓子工房です。
床はダークブラウンのフロアタイルを貼り、壁と天井のクロスはベージュを選んでもらいました。
換気扇やキッチンのフレーム、ライティングレールは黒を採用し、全体的にシックで落ち着いた印象の色合いになっています。
続いて菓子工房としての機能をひとつひとつご説明します。

まずキッチンですが、当初は幅1200mmの小さなサイズを検討していましたが、桜田さんのアイディアを元に1500mmに広げました。
コンロはIHクッキングヒーターにする予定だったのですが、ガスの火力を必要とする方もいると桜田さんに言っていただいたので、2口のガスコンロにしてあります。
キッチンの収納部分は、利用者さんが自由にアレンジできるよう、あえて空間だけにしました。
また、東京都目黒区の保健所からは、菓子製造業のためのキッチンはシンクが1つでよいとご指導いただいたので、シンクは1つとなっています。

ガステーブルの下部はレンジを置いてもらうスペースにしようと思い、ここも収納にはしていません。
そして桜田さんのご意見を元に、ガスオーブンか200Vの電気オーブンを置けるようにと、壁面にガス栓と200Vのコンセントを設置しました。

キッチン下のオーブンスペースは、コンセントが200Vなので、100Vの電気オーブンは置けません。
そのため100V電気オーブンを置きたくなるような場所近くのコンセントにはアースをつけました。冷蔵庫用も含め、アース付きのコンセントは部屋に3箇所あります。

菓子工房内の洗面台は玄関から工房に入る手前に設置しました。
当初は幅1200mmのキッチン横に設ける考えでしたが、キッチンの幅を1500mmとしたことから移動する必要が生じ、きちんと手を洗ってから菓子づくりを始めるには、この場所がベストだろうと思い、ここに据え付けました。
水栓は保健所の施設基準を満たすためシングルレバーとし、ハンドソープなどを置く小さな棚もつけています。

菓子工房用手洗いの横にある扉はトイレの前室の扉です。

この扉を開けると小さな前室スペースがお目見えし、入ってすぐ左側にトイレの扉があります。

トイレは洗浄機能付きとし、その手前にトイレ用手洗いを設置しました。
この手洗いを設置するために、トイレの壁を少し広げてつくりました。

天井の照明はライティングレールを採用しています。
利用者さんは自分の好きな色や明るさ、数の照明機具をここに取り付けることができます。
またコンセントとしての機能も果たすので、調理機具の電気コードを床に這わせず、このライティングレールから垂らして使うことも可能です。

こちらはバルコニー側から見た室内の写真です。
左奥に扉が見えますが、これは洗濯機置場の扉です。
タオルやエプロンなどを家に持ち帰って洗濯するのは大変なので、洗濯機も菓子工房にあると便利だと思います。

エアコンも新設しました。
フルリノベーションは設備も新しくなるから、最初に入居される方はラッキーですよね。

こちらのマンションにはインターネット・Wi-Fiの無料サービスがついていて、この菓子工房も当然無料でネットが利用できます。
ご自身で利用料を負担すれば5,000円前後はかかりますので、財布にやさしいサービスだと思います。

オーナーの背中を押してくれる空き待ち登録

この菓子工房は、東急田園都市線で「渋谷」駅からたった1駅、「池尻大橋」駅から徒歩2分という場所にあるマンションの1室をリノベーションしてつくりました。
お家賃は共益費と合わせても8万円台でしたが、この立地と、菓子工房にするための工事代が自己負担ゼロだったことを考えると、リーズナブルな価格設定だったかなと思います。 桜田さんとは工事完了の目処が立った1ヵ月前に賃貸借契約を締結し、完成の8日後からご入居いただきました。
オーナーさんの側から見ると、リノベーション工事を実施する前に入居申込みをしてくださったおかげで安心して菓子工房とする決断ができましたし、完成してすぐ入居してもらえたことは賃貸経営的にも良かったと思います。
桜田さんも、カラーコーディネートをはじめ、ご自身の要望が盛り込まれた菓子工房を、工事代の負担なく借りられるようになり、満足度は高いようです。
皆様には、「空き待ち」登録をしていただければ、こうした事例を増やしていけると思いますので、是非検討してほしいです。
登録の際は、希望エリアや広さ、支払える上限のお家賃、菓子工房単独or菓子工房付き住居の別などをお知らせいただけると、オーナーさんから新築やリノベーションの相談があったときにお声をかけやすいです。合わせてご検討ください。

文:久保田大介

  • この記事を書いた人

久保田 大介

『ワクワク賃貸®』編集長。有限会社PM工房社・代表取締役。 個性的なコンセプトを持った賃貸物件の新築やリノベーションのコンサルティングを柱に事業を展開している。 2018年1月より本ウェブマガジンの発行を開始。 夢はオーナーさん、入居者さん、管理会社のスタッフさんたちがしあわせな気持ちで関わっていけるコンセプト賃貸を日本中にたくさん誕生させていくこと。

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