《 菓子製造許可が取れる賃貸住宅 》Vol.002

東武東上線「ときわ台」駅にあるマンションの1階ミニ店舗を「菓子製造許可が取れるスペース」に新装中!

投稿日:2022年8月11日 更新日:

普通の飲食店舗と菓子製造業はアンマッチ?

「adagio」101号室の室内。扉の奥にトイレがある。

本コーナーは「菓子製造許可が取れる賃貸“住宅”」と銘打っていますが、「住まいは一緒でなくても構いません」「むしろ住まいとは別のほうがありがたい」という方も大勢いらっしゃると思います。
そうしたお声に対し、私は当初「そうであれば飲食店舗を借りたらいいのではないかな?」と軽く考えていました。
しかし、菓子製造スペースを実際に探している方たちにお話を伺って、飲食店舗ではマッチしない理由がわかるようになってきました。まだ理解は不十分だと思いますが、私がわかっている(つもりの)理由は主に次のものです。

飲食店舗には客席があり、そのスペースがある分、当然賃料も高くなる。
飲食店舗は集客が見込めるエリアにあるので、やはり賃料が高い。
飲食店舗は保証金も高く、初期費用が嵩む。

主にコストの面で難しいと判断されているように私は受け止めています(ほかにありましたら、是非お聞かせください)。

シェアキッチンはどうか?

普通の飲食店舗が難しいのであれば、シェアキッチンはどうなのだろうか?と考えました。シェアキッチンなら賃料は安いし、予め設備も整っているから初期費用も安くて済みます。
けれど、菓子製造スペースを探している方たちにお話を伺うと、シェアキッチンはスタートアップとしては最適だけれども、本格的にやろうとする方にとっては、いくつかデメリットがあることがわかりました。
シェアキッチンのデメリットは、

自分が利用したいときに利用できないことがある。
利用者の誰かが食中毒を出してしまうと、全員がシェアキッチンを利用できなくなる。
食材や包装材を保管しておくスペースがない(もしくは少ない)。

などが挙げられるようです。

クラウドキッチンはどうか?

それならば、今流行りのクラウドキッチンはどうだろうか?と考え、調べてみました。
クラウドキッチンは普通の飲食店舗と違って客席がないから余分な賃料が必要なく、自分ひとりで使えるからシェアキッチンのようなデメリットはないように思われます。
けれど、クラウドキッチンにもやはり課題が見つかりました。それは

ほとんどのクラウドキッチンは賃料が高い。
菓子製造のためには不要な設備が多く、その分賃料が高くなる。

ということです。
もちろん全てのクラウドキッチンの賃料を知っているわけではないので、例外もあるでしょうが、総じてクラウドキッチンの賃料は菓子製造だけを考えている方にとっては高いように思います。
その理由は、おそらくクラウドキッチンの多くが一等地、市街地にあるからではないでしょうか? と言うのは、クラウドキッチンの場合、デリバリーが基本なので、郊外では配達時間がかかるので難しい。人が大勢いるエリアの中にあり、さらにデリバリーのための車やバイク、自転車などが停められる場所も必要なので、それらが賃料をUPせざるを得ない原因となります。
「菓子製造をしてネットで販売したい」という場合、売上には限界があることが多いですから、クラウドキッチンとはあまりマッチしない。そんなことではないかなと考えています。

商売するには厳しいミニ店舗、空きスペースを使う

共用部から見た「adagio」101号室

そこで考えたのが、飲食店舗にもシェアキッチンにもクラウドキッチンにも向かない小さな空間を「菓子製造許可が取れるスペース」に新装する案です。
それはどんな空間かと言うと、

人通りが少ないので飲食店舗には向かない。
客席を取れるほどの広さがない。
1区画しかないのでクラウドキッチンには不向き(※クラウドキッチンにするにはある程度区画数が取れる必要があります)。

「そんな都合のいい小さな空間なんてあるのかしら?」と感じる方も多いかと思いますが、これが結構あるのです。
私が親しくお付き合いさせていただいているオーナーさんにも、こういう小さな空間を持っていて、何にも使っていないという方がおられたので、「試しにやってみませんか?」と提案してみました。
それが今回ご紹介する物件です。

「adagio(アダージョ)」101号室の新装プラン

「adagio」の案内図。

1階のミニ店舗を「菓子製造許可が取れるスペース」に新装中の物件は「adagio(アダージョ)」といいます。
東武東上線「ときわ台」駅(東京都板橋区)から徒歩7分、川越街道に面した土地に建てられた2015年築の賃貸マンションで、その101号室は新築当時からずっとスケルトン状態になっています。
専有面積は8.75㎡と狭いこの空間を「菓子製造許可が取れるスペース」に転用しようと考えたのですが、これはかなり骨の折れる作業となりました。この狭い空間に保健所から許可をいただくための要素を全て盛り込むのが大変だったのです。
2022年4月からプランをつくり始め、これまで10数案考えました。考えたプランを施工業者さんに送ると、業者さんはそれが実現可能かどうか現地調査をしてくださり、「大丈夫そう」と言っていただけたものを板橋区保健所に持参し、確認していただきました。
施工業者さんはこれまで6度も現地に行ってくれ、私も板橋区保健所に3度通いました。
最後に保健所からのOKをいただいて、できあがったプランが次の図です。

「adagio」101号室のプラン。

オーナー側で、キッチン、ガスレンジ、作業台、トイレ、洗面台、エアコン、間仕切り壁等を用意し、冷蔵庫とオーブンレンジは入居者さん自身で設置いただく考えです。
プラン完成後、私のほうで以前、菓子製造許可が取れる賃貸住宅を仲介させてもらったお客様(C.S.さん)にお願いし、現地を見ていただきました。
C.S.さんからは「材料や調理器具、包装材などの保管スペースが少ない」との指摘をいただきましたが、なにぶん狭い空間ゆえ、平面上では保管スペースを設けることができないので、立体的に捉えることにしました。つまり壁面に棚をできるだけ多く設置し、キッチンと作業台の下の空間を使っていただこうということです。
冷蔵庫はプラン上では1ドアにしていますが、2ドアの冷蔵庫をご用意いただければワイドももう少し広げることができそうで、冷蔵庫も保管スペースと考えていただきたいと思います。

「adagio」101号室の室内

C.S.さんには賃料についても相談させていただきました。このスペースだと大量につくって販売するのは難しいから、当然売上にも限界があるだろうと言われ、「5~6万円あたりがいいところでは?」と助言されたのを受け、オーナーさんと協議。
結果、賃料は月額6万円(税別)とさせていただくことにしました。

「adagio」101号室の空き待ち受付中

現在(2022年7月)は施工業者さんに工事を発注し、準備を進めていただいている段階です。
完成は2022年9月下旬となる見込みですが、一般募集をする前に「ワクワク賃貸」で「空き待ち」登録を募り、ご登録者が複数おられたら、新装工事完了後すぐに内見いただき、正式申込みするかどうかご検討していただこうと思っています。
正式申込みしたい方が複数おられる場合、どうするかはまだ決めていません。
賃料以外の募集条件は下記の通りです。

【「adagio(アダージョ)」101号室募集条件】

  • 敷金:2ヵ月
  • 礼金:なし
  • 賃料:60,000円(税別)
  • 共益費:8,000円(税別)
    ※101号室はマンションの共用部と電気メーターが一緒になっていて、従来の電気料金から増える分を共益費としていただく考えです。つまり「電気代=共益費」となります。
    他の事例から月額8,000円と推定されますが、当初契約期間が完了した際、データを確認し、更新時に協議の上、再設定したいと考えています。
  • 契約期間:2年間
  • 保証会社:要加入
  • 更新料:新賃料の1ヵ月分(税別)
  • 火災保険:ご自身で加入していただきます。

その他、ご不明な点があれば「空き待ち」登録の応募ページから気軽にお訊ねください。
また、ミニ店舗空間を「菓子製造許可が取れるスペース」にするアイディアについても、ご意見・ご感想などを頂戴できると助かります。
応援したいと思っている方たちに応援を乞うのもおかしな話ですが、まだ始めたばかりの企画ですので、一緒につくっていっていただけると嬉しいです。

 

文:久保田大介

  • この記事を書いた人

久保田 大介

『ワクワク賃貸®』編集長。有限会社PM工房社・代表取締役。 個性的なコンセプトを持った賃貸物件の新築やリノベーションのコンサルティングを柱に事業を展開している。 2018年1月より本ウェブマガジンの発行を開始。 夢はオーナーさん、入居者さん、管理会社のスタッフさんたちがしあわせな気持ちで関わっていけるコンセプト賃貸を日本中にたくさん誕生させていくこと。

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