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庭先から天空まで、あらゆるプールを設計する <コンパス・プールズ> 〜ウエスト・サセックス(イングランド)〜

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9月の東京、自宅の一室でこの原稿を書いている。例年通り台風が過ぎ去り、異常な暑さがぶり返した。庭先にプールがあれば今すぐ飛び込むのにな、などと夢想する。

日本でプール付きの家にお目にかかることはあまりないが、アメリカでは国民の20%弱が住居にプールを備えているという統計がある。英国では、天候が不安定なため温水機能付きのプールが主流だそう。いずれにせよ、日本の外に目を転じれば、プールは住居の重要なエレメントなのである。今回はプールの製造・設置に特化した企業、コンパス・プールズをご紹介する。

コンパス・プールズは1981年にオーストラリアで創業、以後30年にわたって高品質のプールを世界中で販売し、業界をリードしてきた。欧米にも製造拠点を持ち、現在は32の国でビジネスを展開するグローバル企業だ。

一口にプールと言っても、コンパス・プールズは敷地や用途に合わせてさまざまなデザインを展開している。涼を取るための浅い「プランジ・プール」、化学薬品ではなく、葦床とポンプを使い水質を保つ「ナチュラル・プール」、そして水泳用の室内・屋外プール。いずれも組み立て式ではなく、つなぎ目のないセラミック仕上げなのが特徴だ。セラミックはバクテリアの繁殖を防ぎ、熱伝導も早いので、メンテナンスやランニングコストが抑えられる。デザインは9種、形状と大きさは27種。LEDライトや水流を起こすジェットの設置に加え、プールの内側のカラーも選択可能。素材の色合いはそのまま水の色として認識されるので、タヒチの浜辺に似せたホワイト、ハワイの海を思わせるサファイアなど、なんとも洒落たカスタマイズができるのだ。

さて、つい先頃、コンパス・プールズが発表したある壮大なプールの計画が世界中の注目を集めることとなった。場所はロンドン。55階建てのホテルの屋上に全面透明なプールを設計するというのだ。「インフィニティ・ロンドン」と名付けられたプールはその名の通り、360度、無限に広がるロンドンの眺望を楽しめるという夢のようなコンセプトだ。 しかし、メイン・ビジュアルとなるこの写真が20カ国ものメディアで取り上げられると、その斬新なデザインに少々ネットがざわついた——「客はヘリコプターから水中へと放り込まれるらしい」、「子供がトイレに行きたくなったらアウト」、「一度入ったら、どうやっても出られない」などなど・・・。

そんなジョークや心配事を一蹴すべく、設計者のアレックス・ケムズリーは多くの疑問に答えるビデオを発表することになった。ある建築サイトは資料を読み間違えたようで、「利用者はビル内部に置かれた潜水艦に乗って、そこから下船してプールに入る」と記していたが、これにはアレックスも苦笑する。「さすがにそれはできませんが、潜水艦のドアのデザインを元に入室方法を設計しています」と訂正する。

そもそもアレックスは、現在コンパス・プールズのテクニカル・ディレクターを務め、英国プール連盟の元会長、さらにはイングランド・アイルランドのスパとホット・タブ(温水浴槽)協会の元理事である。プール設計の基準を定める組織の要職についていた人物ともなれば、絵空事に過ぎないプランを世界中に発信するはずがない。

インフィニティ・プールとは、水面と周囲の海や空の境目がわからないように見せることで浮遊感や開放感を感じさせるプールの一種。プールの外縁部が二重化されていて、内側の縁を超えた水が外側の縁との間の溝に流れ落ちることで、水と周囲との視覚的連続性を保てるという仕組みだ。インフィニティ・ロンドンは、地上200メートル以上のビルの屋上に屋根もなく60万リットルもの水を蓄える計画なので、風力計を制御装置に接続し、風で溢れる水の量をコントロールするそう。

ビル自体も先細になる予定なので、地上を歩く人にバシャバシャと水をかけたり(ネットで心配された、子供がやりそうないたずら)、地震で水が溢れ落ちることがあっても、ビルの壁面が濡れるだけに留まるとされている。

肝心のプールへの出入りは、「さながらジェームズ・ボンドのような仕組み」だと、アレックスは言う。プールの床面にはアクリルキャスト板を使用し、ビル内からは頭上にスイマーたちが見えるよう設計されるが、その一角に大きな二重の筒を設けるそう。このうち、外側の筒が床に切り込むように持ち上がり、エアロック(気圧の異なる所への出入り口)をつくる。そこへ螺旋階段が内臓された内側の筒が上がってきて、人々はここを昇り降りするという計画だ。なんとも近未来的!

インフィニティ・ロンドンは、アレックスが2017年から温めてきた計画で、これまで英国やドバイの超高級ホテルチェーンなどと実現に向けて協議を進めてきた。現段階ではロンドンに絞られているが、具体的な建設地は明かされていない。それでも建設は早くとも2020年に始められると言うから見通しは明るいようだ。

運動やリラクゼーションのために多くの人が必要とするプール。それは住宅の資産価値を高め、ホテルの集客に貢献する重要な建築要素でもある。庭先から天空まで、コンパス・プールズはあらゆる場所でプールの新たな機能と姿を追求し続けている。

写真/all sources and images courtesy of Alex Kemsley and Compass Pools

コンパス・プールズのサイトはこちらから

取材・文責/text by: 河野晴子/Haruko Kohno

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河野 晴子

キュレーターを経て、現在は美術を専門とする翻訳家、ライター。国内外の美術書、展覧会カタログの翻訳と編集に携わる。主な訳書・訳文にエイドリアン・ジョージ『ザ・キュレーターズ・ハンドブック』(フィルムアート社、2015年)、”From Postwar to Postmodern Art in Japan 1945-1989”(The Museum of Modern Art, New York、2012年)など。近年は、展覧会の音声ガイドの執筆も手がけている。夫、娘、猫と都内に在住。

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