美術作家の大家さんが企画するアトリエ賃貸プロジェクト
「アトリエ賃貸推進プロジェクト」Vol.006の記事でご紹介した「芙蓉荘」は、数多くの問合せをいただき、その中のお一人、美術作家の水口麟太郎さんが契約をしてくださいました。
麟太郎さんが入居されてすぐ、「芙蓉荘」のオーナーである本田晴彦さんと一緒に訪問し、おふたりのインタビュー記事を配信したところ、「私も芙蓉荘に住みたい!」という空き待ち登録が続々と増え、第2弾が待望されていました。
今回はその第2弾のプロジェクトが始動したことをご報告したいと思います。
その前に、芙蓉荘がなぜアトリエ賃貸として注目されたか、そのポイントをおさらいしておきましょう。
[芙蓉荘・リノベーションのポイント]
❶床はコンパネで、ペンキや絵の具などを垂らしても構わない。
❷一部、オーナーへの申請なしに棚を設置したり、塗装したりできる壁がある。
❸天井は鉄骨むき出しの状態なので、階高が通常より高くなっている。
❹遮熱・断熱のために屋根にガイナ塗装が施されているため、天井材が貼っていなくても、暑さ・寒さはさほど影響がない。
❺絵筆を洗うことなどに使えるよう、業務用のダブルシンクのキッチンが設置されている。
❻浴槽はなくシャワーブースのみなので、その分アトリエスペースが広くとれている。
❼電気のアンペアは50Aまで増やせる。
ご自身も美術作家である本田オーナーが、美術作家やものづくりをする方たちにとっての使いやすさを追求しリノベーションした結果、こんな素敵なアトリエ賃貸が誕生しました。 麟太郎さんが暮らす201号室以外は普通のお部屋ですが、「今後、空室が出るたび、アトリエ賃貸にリノベーションをしていきたい」と本田オーナーは言われていて、このたび麟太郎さんのお隣の部屋・202号室が空いたので、宣言通り、アトリエ賃貸にリノベーションしてくださっています。
「芙蓉荘」プロジェクト第2弾発表
「芙蓉荘」202号室は、取材当日(2022年11月14日)、すでに室内は解体されていて、大工さんの指示に従い、材木屋さんがせっせと建材を室内に運んでおられました。
その進行具合を、管理するハウスメイトの社員さんたちと本田オーナーがチェックされると伺い、取材に伺いました。
まずは今回のリノベーション・プランをご紹介します。
こちらは202号室の元の間取りです。
専有面積25.28㎡、1Kタイプのお部屋で、バランス釜のお風呂と和室であるため、このままではお家賃を下げないと、なかなか次の入居者さんは決まらなさそうです。
そのお部屋を上記プランの通り、リノベーションすることになりました。
キッチンと和室、押し入れの壁を撤去するなど、いったん全てスケルトンにし、水回り以外は全てアトリエに!
そして麟太郎さんのお部屋で成功したアトリエ賃貸化のポイントは、ここでも全て採用されます。
201号室は約30㎡ありましたが、今回の202号室はそれより少し狭いので、お家賃もその分低めに設定されています(※募集条件は後述します)。
25.28㎡でも余分な壁が一切ないので、かなり広く感じました。これぐらいの広さで十分という方にとってはお家賃が安くなるから良いかもしれません。
201号室と違うのは、
◯カウンターデスクは設置されない
◯ガスコンロはなく、IHクッキングヒーターを置けるようになっている
という2点とのことです。
130号の絵画が搬入・搬出できるか実験
さて、今回は麟太郎さんのお部屋と同じ企画だというのに、あらためて取材に伺ったのには理由があります。
私のほうで「アトリエ賃貸にとって、大きな作品を搬入・搬出できるかどうかは重要なポイントです」と本田オーナー、ハウスメイトさんにお伝えしていて、必要に応じて、そのための工事を検討しようという話になっていたのです。
私からは「100号ぐらいまでなら普通のアパート、マンションでも搬入・搬出できそうなので、それより大きなサイズの作品でも大丈夫ということになったら、きっと重宝されると思います」と言っていました。
ちなみに、現在、武蔵野美術大学周辺で進めているアトリエ賃貸新築プロジェクトでは200号サイズの絵画を楽に搬入・搬出できることを目標に掲げ、プランニングをしています。
既存のアパートで、それは無理な話ですが、120号、いや130号ぐらいいけたら作家さんたちにはかなり喜ばれそう。
この提案を管理会社のハウスメイトさんが真剣に受け止めてくださり、現場で打合せをすることとなりました。
まずは202号室の玄関扉の内寸を測ってみます。
高さは1,800mm、幅は750mmあることがわかりました。
この結果をストレートに受け取ると、130号Fサイズ(1,940mm✕1,620mm)であれば、絵画を横にすれば搬入・搬出できそう。
だけど、それにはまだいくつか関門があります。
まず、玄関は土間になっているけれど、上がり框の高さが80mmほどあるので、その分は引く必要があります。絵画を裸で運ぶ人もいないだろうから、梱包材の厚さも念頭に入れる必要もあるのです。
さらに共用廊下の幅が狭ければ、絵画が玄関を通過できないという問題もあります。
多くのアパートの共用廊下幅は800mm程度なので、斜めにしても130号Fサイズはかなり厳しい。
その場合、鉄柵を一部切り、開閉できるミニ扉にしておいて、搬入・搬出のときだけミニ扉をオープンにするというアイディアをご提供していました。
すると、ハウスメイトから今回の企画に加わっている伊部尚子さん(DIY賃貸推進プロジェクトの執筆者です)は、「もっと大胆に鉄柵を切り開き、その扉部分を看板にしてしまうのはどうか?」という、驚くような提案をしてくれました。
そんなことができたら凄い!と思っていましたが、実際に共用廊下の幅を採寸すると、芙蓉荘は1,000mmもあることがわかりました。
これはひょっとすると、鉄柵を切り開かなくても、130号Fサイズ(1,940mm✕1,620mm)の作品が運び出せるようになるかもしれない!
そこで実際にそれが可能かどうか実験してみることにしました。
この実験のためにハウスメイトさんは大きなサイズの段ボールを用意してきてくれていました。
それを組み合わせれば130号Fサイズの絵画と同じ大きさのものをつくることができます。
さっそく採寸し、段ボールをカッターで切断し始めると、美術作家の血が騒いだか、本田オーナーも実験用段ボール制作に協力をしてくれました。
用意してきた段ボールは1,620mmの辺はクリアできたけれど、1,940mmには足りなかったので、2枚組合せ、1,940mmの辺もつくります。
最後に2枚の段ボールをガムテープで貼り合わせ・・・
130号Fサイズの実験用段ボールが完成しました。
この実験用段ボールが玄関から搬入・搬出できるか、早速実験開始。
手前を本田オーナーが持ち、後方を伊部さんが持って運びます。
1,620mmの辺は玄関扉の高さを無事通過。
途中から斜めにしてゆっくり運ぶと、長辺の1,940mmも何とかいけそう・・・。
とうとう実験用段ボールの全てが玄関扉と共用廊下を通過することができました!
この日、共用階段には搬入中の材木が置かれていたので、危ないから実験はここで終了。
けれど、門の幅には余裕があるし、塀を越えてお隣の敷地もちょこっと利用させていただければ、間違いなく130号Fサイズの絵画は運び出せるはずです。
梱包材の厚さがどこまであるかはわからないので、厚いものを使うと玄関から搬入・搬出できない可能性もありますが、「その場合、室内の手すりと窓を外せばよいのでは?」というのが本田オーナーのご意見です。
窓のほうも念のため採寸したところ、斜めにしたときの内寸が2,100mmあったので、130号Fサイズなら何とかなりそうです。
だけどそれはちょっと手間ではあるので、梱包材を工夫して玄関から出し入れしたほうが楽でしょうね。
芙蓉荘のある街情報と募集条件
「芙蓉荘」は東京都北区西ヶ原三丁目にあり、東京メトロ南北線「西ヶ原」駅(徒歩7分)とJR山手線「駒込」駅(徒歩13分)の2駅が利用できます。201号室の麟太郎さんは「池袋」駅まで自転車で行っているそうで、15分ほどで着くとのことだから、それも「あり」ですね。
麟太郎さんからは「フルーツショップ、ミニスーパー、100円ショップ、銭湯などお気に入りの店もできました。近くに大きなホームセンターがあるのも非常に便利です」という情報もいただいて、頼もしい先輩入居者さんがいるのはありがたいです。
最後に募集条件をお伝えしましょう。
まずお家賃は70,000円で、ほかに共益費3,000円が必要です。
敷金と礼金は各1ヵ月ずつ。
2年契約で更新料は新賃料の1ヵ月分ということでした。
気になる方は是非内見を!
「芙蓉荘」プロジェクト第2弾となる202号室は、すでに募集を開始しています。
リノベーション工事も、この記事の配信日(2022年12月1日)時点であれば、かなり完成に近づいているかと思います。
前回募集時のことを考えると、かなり早く決まってしまうと思うので、気になった方はまずすぐに内見されることをオススメします。
「空き待ち登録」のページから内見希望のご連絡をいただけましたら、管理会社のハウスメイトさんにすぐおつなぎいたします。
今回の登録に限っては、仮名でなく本名を、そして携帯電話番号もお知らせいただいたほうがありがたいです。ハウスメイトさんが対応しやすければ、優先的に内見していただけるようになると思います。
文:久保田大介