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《 コレクティブハウスの暮らし 》Vol.017

スウェーデンのコレクティブハウス PartⅠ シニア型コレクティブハウス「フェルドクネッペン」

投稿日:2022年5月19日 更新日:

皆さん、こんにちは。コレクティブ研究家の久保有美です。 私はコレクティブな暮らし方=「つながり、ともに働く、フラットな関係」という暮らし方について日々考えています。

これまで当コラムでは、私が居住している東京のコレクティブハウスでの暮らしについてお伝えしていましたが、今回はコレクティブハウスの本場である北欧はスウェーデンのコレクティブハウスの暮らしをご紹介したいと思います。

スウェーデンといえば「高負担高福祉国家」というイメージを多くの方が持たれていると思います。スウェーデン社会におけるコレクティブハウスの歴史は長く、1930年代からコレクティブハウスの前身ともいえる暮らしが展開されています。現代のコレクティブな暮らしへの転換は1970年代ごろからと考えられており、女性の社会進出・核家族化・居住運動などを経て形成されていきます。

学術的なことはさておき、私は2018年9月に視察の機会を得て、スウェーデンのストックフォルムに行ってきました。この視察では2つのコレクティブハウスを見学させていただきましたが、今回はそのうちの1つである「フェルドクネッペン」というシニア型コレクティブハウスについてご紹介します。

フェルドクネッペンは、ストックフォルム市が所有し賃貸しているコレクティブハウスで、1993年に建築されました。全部で43世帯あり、視察当時は54名の方が入居していました。
この物件はシニア型コレクティブハウスとお伝えしましたが、入居可能な年齢が40歳以上と設定されており、子どもは暮らさないコレクティブハウスとなっています。
コレクティブハウジング研究の第一人者である小谷部育子さんは、ご著書『コレクティブハウジングの勧め』の中で「フェルドクネッペンは、子供が独立して出ていった後の大きな家は次世代 に譲り、自分の住戸は小さくてももっと便利で豊かな社会的コンタクトのある家を自分たちでつくろうというコンセプトのコレクティブハウスです」と説明しておられます。
40代からシニアと言われてしまうと、人生100年時代ではミスマッチな感じもしますが、私はシニアというより大人だけが暮らすコレクティブハウスという意味合いで受け取っています。ちなみにフェルドクネッペンの居住者たちの平均年齢は70歳代とのことでした。
この物件では子育て世代の入居は制限されていますが、子どもの出入りに制限はないとのこと。居住者の子どもや孫たちが頻繁に訪れるゲストになるそうです。ある居住者は、この住宅に暮らすことによって若い世代との交流の機会も増えるとおっしゃっていました。

私の暮らしているコレクティブハウスとは子どもと一緒に暮らしていないという点で違いがありますが、各自の部屋と共用のスペースがあること、自分たちの手で暮らしを形成していく自主性で成り立っているということは共通しているように思いました。
食事の共同化(コモンミール)はこちらでもされていて、共同化することで経済的な負担と家事労働に対する負担が軽減されるメリットがあるとお聞きしましたが、これは私も暮らしの中で同じように感じている点です。

フェルドクネッペンでは、ダイニングの空間づくりも大切にされており、テーブルセッティングが素敵でした。
私の暮らしているコレクティブハウスと違い、コモンミールづくりは1週間を1チームで行なっているそうで、高年齢居住者層ということなので役割分担をしっかりとしている仕組みなのだと感じました。

共用スペースには、北欧ならではのサウナスペースや、DIYスペースがありました。
設備やサービスとして、ほかには共用の洗濯機、オフィスのPC、ブロードバンド、図書室に備えられる毎日の新聞、大工作業室に備えられる工具などがあったことが印象に残りました。
共用空間だけでなく、そこに備え付けられた道具・ツールなどを共用することによって、個人の経済的負担を軽減しながら、居住者同士の関わりで専門的な知識・技能が取得できることが、ここでの暮らしのメリットでもあるそうです。

DIYスペース 案内してくれた居住者女性もよく利用するそう。

大きな冷凍庫があるストックルームとサウナ室

共用スペースを見せていただいた中で最もびっくりしたのは、冷凍食品のストックルームとランドリー室です。
冷凍食品のストックルームには大量の食品を保管されていましたが、日本のように24時間空いているコンビニがそこかしこにあるわけではなく、またスーパーでいつでも新鮮な生鮮食品が買えるということでもないため冷凍食品を使うことが多いそうです。国によって必要とされる設備が違うのですね。

ランドリー室はかなりシステマチックに構成されており、予約制で管理がされていました。スーパーにあるようなカートが備え付けられており、部屋から洗濯物を持って移動する労力を軽減するようになっていました。

スウェーデンでの視察はとても有意義で勉強になることばかりでしたが、なかでもコレクティブハウスとしての違いを最も強く実感したのは、国としての暮らしに対する考え方の違いで、スウェーデンでコレクティブな暮らしが根付き継続されているわけが納得できました。
コレクティブハウスの中で大事にされる「個人の尊重」については小さな頃から教えられるということで、私には私の考えがあり、あなたにはあなたの考えがある、ではこの課題についてどうしようか?という考え方を幼児教育の時点からされていると現地を案内してくださった方が教えてくださいました。日本ではこうした考え方は文化として根付いていないため、個人を尊重する、自分も相手も大事にする、ということが苦手な人が多いと感じます。私自身もコレクティブハウスに住みながら体得している最中です。
また、DIYスペースが充実しているように、自分たちで使うものは自分たちで作ったり、修理したり、自分たちの体型や習慣に合わせて物を加工していくという文化もあるため、個人の部屋の中も居住者の創意工夫が凝らされていました。賃貸であっても、自分の暮らしは自分でつくる、という考えがあってこそ、と感じました。

上の写真は視察時に案内をしてくれた女性のお部屋です。左上のほうにレンジフードがついていますが、キッチンはコモンルームで使うため、電熱器は使用しないと決めて取り外したとのこと。代わりに、日当たりがよいこの空間にベッドを置いてお気に入りの場所にしておられました。とても素敵ですね。

国や文化の違いがあっても、住む人と貸す人が柔軟な考え方を持ち、互いに尊重しあえばもっと暮らしの多様性が生まれていくのではないかと強く感じた視察でした。コロナ禍でなかなか望みは叶いませんが、スウェーデンだけでなく他の北欧諸国にあるコレクティブハウスを訪問し、暮らしをのぞいてみたいと考えています。

文:久保有美

  • この記事を書いた人
久保 有美

久保 有美

不動産フリーエージェント。京都出身(京都いうても西の方) 好きな数字:3&9 宅地建物取引士 社会福祉士 賃貸不動産経営管理士 大学でコレクティブハウスという暮らし方に出会う。京都でコレクティブをやりたいと言い続け、建築会社・不動産コンサルティング会社を経て2021年に独立。 新たな暮らし方の提案、福祉と不動産の連携を目指す。

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